母音で覚える絵札の並び

こんにちは、さしみです。素数大富豪プレイヤーの皆さんの中には「数札の並びは語呂で覚えられるけど、絵札ばかり並んでいると覚えられない」という方は多いのではないでしょうか。実際、私もn枚2n桁やそれに近い大きさの素数、超多枚などを覚える際にかなり苦しんでいます。

 

ということで、日本語の母音を活用した新しい絵札の覚え方を考えてきました。この記事では、それを思いつくに至った経緯と使い方、どのような素数に応用できるかを解説していきます。前置きの部分が長くなってしまったので、実用的な話だけ読みたい方は「覚え方」まで飛ばしてください。

 

 

語呂合わせとは

まず、札の並びを覚えるとはどういうことか確認しておきます。素数大富豪では通常、1~Kの13種類の札を自由な順番で並べて数を作ります。つまり、素数を覚えるためにはその13種類の記号の列を覚える必要があります。ただし、同じ枚数の中で相対的に小さい素数であれば1~9の9種類、大きい素数であればT~K(10~13)の4種類しか札を使わない場合もあります。

 

ここで、一般に数字の並びを覚える際に用いられる語呂合わせについて考えます。よくあるのは、1~9までの数字を、その読み方などに関連した音に変換し、それで言葉を作って並び全体と対応させる方法です。例えば1は「いち」「ひとつ」なので「い」「ひ」などと読むことにすると、日本語を母語とする人にとって直感的に覚えやすくなります。

 

さらに、素数大富豪においては、10~13を数字2つとして解釈する方法の他に、札の名前やTJQKと略した記号に関連させて音を割り当てる方法があります。Jを「じゃ」としたりTを「と」とするようなもののことですね。

 

このような語呂合わせのやり方は、多くの日本語母語話者にとって馴染み深く、素数大富豪を始めたばかりであっても簡単に覚えられることから、広く使われています。5は「こ」「ご」しか一般的に使われないなどある程度の偏りはあるものの、慣れれば新しい語呂を作ることもそう難しくありません。1桁1音程度と効率も良いです。

 

絵札の問題点

それでは、なぜ絵札だけの並びを覚えるのは難しいのでしょうか? 

 

全ての札を使う場合や数札のみの場合は、ひらがなで表せる音のかなりの割合が、何らかの数字に変換できます。そのため、多様な語呂を作ることができ、印象に残りやすいのでしょう。

 

一方、絵札のみの場合は、日本語の音の一部しか使わないため、どうしても語呂に現れる言葉が似たり寄ったりになりがちです。また、JやQなどはそもそも対応する音が(先ほど挙げた5と比べてもさらに)日本語に登場しづらくなっていて、語呂を作るのが難しいというのも大きな要因でしょう。

 

しかし、考えてみると、元は1~9の並びを覚えるために作られた語呂合わせです。後から追加されたT~Kだけを覚えるのに、使いづらいのは当然の話です。そもそも、4種類の記号の並びを覚えるというのは、記号が13種類の場合と比べて簡単に違いありません(理想的な符号化では「語呂」の長さは0.54倍で済む)。どうしてもっと効率の良い覚え方を使わないのでしょうか?

 

母音を活かす

では、どのような方法が効率的になるでしょうか。理想的には、既存のものと同程度の語呂の作りやすさであれば、ずっと短い語呂で絵札を覚えられるわけです。しかし、実際に絵札2枚を1音に対応させるような方法は、あまりにも煩雑に見えます。そのため、1枚1音は崩さず、より語呂を作りやすくする方向性に決めました。

 

すると、ひらがなで表される音をなるべく広くカバーできるように4種類のグループを定めるのが最適ということが分かります。また、音から絵札に直すのもできるだけ簡単にできることが望ましいです。

 

既に同様のことを考えている方もいるとは思うのですが、私が思いついたのはそれぞれの絵札を母音に対応させることでした。ただし、単純に上からアイウエと振るのではなく、TQやQTの並びをよく使う、最後はJやKになるなどのことから(特に厳密な計算はしていませんが)感覚的に語呂を作りやすく、並びを復元しやすくなるように工夫しました。それにあたっては以下の、日本語の音の出現頻度に関する論文が参考になりました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/41/1/41_1_73/_pdf

https://repository.ninjal.ac.jp/record/1037/files/kkrep_049_05.pdf

 

覚え方

作るまでの経緯を長々と書いてしまいましたが、ここからが実用的な話になります。と言っても規則は本当に単純で、以下の通りに変換するだけです。

 

T:ア

Q:イ

J:ウ

(X:エ)

K:オ

 

ただし、それぞれのカタカナは母音を表し、例えば絵札Tは母音がア、すなわちア段の全ての音に対応します。また、長音は2枚分としますが、例えば「公式」の2音目が「ウ」か「オ」かについては各自の判断に任せます(私はそもそも使わないようにしています)。

 

また、Xは予備で、普段は使いませんが、四つ子素数大富豪でJとKのどちらかを選べる場合などに割り当てると便利です。「ん」に対応する要素は定められていません。

 

ところで、母音にだけ注目するというのは、歌やラップなどで韻を踏むときに使われる考え方ですね。上の方法もラッパーなら一瞬でマスターできるのかもしれません。私はその辺の感覚は人並みなので、語呂を作る際は下のサイトで検索をかけています。

https://kujirahand.com/web-tools/Words.php

 

実用編

ここからは、実際にこの覚え方を使って様々な素数の語呂を作ってみます。語呂と言っても音が札と対応しているわけではないので「キー」などと呼んだ方が適切なのかもしれませんが。

 

4枚8桁

4枚8桁と言えば浅葱さんがよく苦しんでいるのを見かけます。この記事とは絵札1枚の情報量を2ビットとして圧縮する発想が共通しています。

https://asangi-a4ac.hateblo.jp/entry/2018/12/12/063112

 

また、私もマスプライム杯のときはKQTKを間違って出してしまっていました。まあこれ3の倍数なんですけど。ということで4枚8桁の上位互換を全部エンコードしていきます。

 

KJQJ:北陸、国立、モルディブ

KJTK:洞爺湖、放課後、よつばと!

KTQJ:ポラリス、ドライブ、モザイク

QKJK:フィヨルド、素人、美少女

QQQJ:イギリス、イチジク、ひき肉

JKJJ:湯豆腐、黒服、葡萄酒

 

これだけです。嘘です。最初なのでいろいろ挙げてみただけで、なんとそれぞれの項目から一つずつ好きなものを覚えれば大丈夫です。一応どれも一つ目は北に関連する地理的な要素にしてみました。「北陸、洞爺湖ポラリスフィヨルド、イギリス、湯豆腐」覚えられる気がしてきませんか? え、一つおかしいって? (JKJJとか出したことないし)北ってことで寒いときに食べる料理だし許してくれませんか?

 

ちなみに、GPT-4にストーリーを作るように頼んだら、美少女と黒服の男が伝説のひき肉を探す話ができました。せっかくなのであらすじだけ載せておきます(カギかっこでキーワードを強調しています)。

 

「国立」の美術館で働く「美少女」美咲は「放課後」「黒服」の謎の男に「ドライブ」に誘われる。彼らの目的地は国立公園内の隠された場所。男は特別な力を持つ伝説の「ひき肉」を探しており、美咲の好奇心が彼女をその探求に引き込む。

 

n枚2n桁

この方法は、もちろんもっと大きな切り札を覚えるのにも使うことができます。私がよく使う7枚出しで、最強格からは落ちるために絵札の順番が分かりづらいものをいくつか変換してみましょう。

 

KKQJQTJ:重い串カツ

KQJJTTK:トリプルカード

KTQQJTJ:おはじきクラブ

 

KKTQQQJ:大人しいイス

KQQTQTK:もみじ秋場所

KQTQQTJ:ゴリラTシャツ

 

もちろん語呂は一例です。個人のセンスが問われるところですね。「トリプルカード」が全然トリプルカードじゃないのは結構面白くないですか?

 

JTTQKJKQ=2^4×693831325819457

https://twitter.com/graws188390/status/1608115246480384000

などといったJ始まりでいかにも覚えづらい合成数もこのとおり!「暗闇コウモリ」

 

KJJTTKJK=T7×197×62199867647

四つ子素数大富豪8枚最強合成数もこのとおり!「恐怖! がしゃどくろ」

 

ちなみに、7音以上を一気に検索にかけると出てこないことの方が多いです。適当に区切って関連のありそうなものをくっつけると、覚えやすい語呂ができると思います。また、Kが先頭に連続する場合はそのまま覚えてもかまいませんが、省略してしまうのも有力です。

 

絵札攻勢

絵札の並びを覚える必要があるのはn枚2n桁に限りません。絵札が5枚以上含まれる素数をたくさん覚えておけば、KKJのような強力な切り札がなくても初手を返されずに勝つことができる場合があります。

 

その際、一般的には絵札を後ろに並べ、数札を先頭につけるのが覚えやすいとされている気がします。しかし、KKQTJやQQTTJのように絵札を覚えやすい順番に固定した場合、望む数札の並びで素数を作れるとは限りません。

 

そこで、私は、強い素数がたくさんできる絵札の並びをそれぞれの組み合わせで一つと、その先頭につけられる数字の並びを覚えることにしました。まだ探索中ですが、以下に一例を示します。

 

-JTQQK「スワヒリ語」(単体で素数となるのはQJQTK「ひつじ顔」)

642,645,864:「虫」と2,5,8を大きくなるように並べる

84,82,42:2,4,8から2枚を大きくなるように並べる

 

このように、馴染み深いものと独立な並びにも、簡単に語呂をつけることができました。私は組み合わせごとに多くても2,3個しか覚えないつもりですが、最大を求めるなら同じTJQQKでも大量の順番を区別し、それぞれに語呂を作ることもできます。

 

超多枚

もう一つ、絵札の並びを覚えることが求められるのが超多枚です。mickeyさんは超多枚素数を覚える際に数札の並びを固定し、絵札を組み替えています。その方が合理的だと私も考えていますが、やはり絵札の並びを覚えるのが苦手な人にとってはつらいです。実際、私も998876654432KKQJTQTJが覚えられず、998876654432QQKKTTJJの形を使っています。

https://mickey57.hatenablog.com/entry/2023/12/26/000654

 

ということで、今回は、998876654432につけられる絵札8枚の並びを覚えてみましょう。

 

KKKQTQJJ:驚き大福

KKQKQQTJ:おもしろTシャツ

KKQJTQTJ:氷スタジアム

KQJTTJQJ:子犬笑う犬

KQTQQTKJ:ゴミ屋敷太郎

 

今回2回目の「Tシャツ」を使って思いましたが、これ、混ざりますね。とはいえ、それはどんな覚え方でも逃れられない宿命な気もします。せっかく自由度が高いのですから、語呂に上手くテーマを持たせて区別できると良いですね。

 

おわりに

母音を使った絵札の覚え方、いかがだったでしょうか。まだ私も試行錯誤しているところですが、ありそうでなかった、新しいものを提案できたと思っています。これから使っていく中で改善していきたいところですが、もし面白いと感じたら、皆さんもぜひ試してみてください。それでは良い素数大富豪ライフを!