可変系素数まとめ

この記事は、素数大富豪 Advent Calendar 2023の21日目の記事です。

https://adventar.org/calendars/8629

 

昨日はカステラさんによる全出し対策の記事でした。全出しをしないゲームはのんびりしていて私も好きですが、戦略的にも全出し以外の手が有効な場面は知識が増えれば増えるほど出てきますね。

 

はじめに

こんにちは、さしみです。皆さんは四つ子素数、好きですか? 1,3,7,9のどれをつけても素数になることから、一度に4つの素数を覚えることができるのは効率よく、またロマンを感じて私は大好きです。

 

この記事では、四つ子素数のようにある場所に複数の数を入れて素数にできるものを可変系素数と呼び、紹介していきます。既に考案されているものに加え、私が2023年に考えたものも登場します。ぜひ皆さんのお気に入りの可変系素数を見つけてください!

 

用語集

N個一組:1つの数の並びに対し、N個の異なる素数が表現されていること。2~9程度が確認されている。

固定部:ある組において、数字が共通している部分。

可変部:逆に、ある組において数字が異なる部分。主にXで表され、入る数は可変系素数の種類ごとに決まっていることが多い。

 

先行研究

四つ子素数以外はあまり知名度が高くないものの、可変系素数は昔から様々なプレイヤーにより研究されてきました。まずはそれらの特徴を見ていきましょう。

 

四つ子素数

まずはおなじみ、四つ子素数です。例えば820台の数は、2または5で割り切れない限り素数となりますが、それが821,823,827,829の4つとなることから四つ子素数と呼ばれています。また、よくある表記の方法として、Xに(決めておいた中から)何を入れてもよいという意味で82Xとするものがあります。四つ子素数に関しては(quadrupleから)82qなどとする書き方もありますが、ここでは他の可変系素数にも応用できるXを用います。

 

四つ子素数のメリットは、やはり変化させる部分が必ず最後にあり、1桁の数4つと決まっていることです。これによって、どこに入れれば良いのか、あるいは何をつけられるのか、悩むことが全くありません。このシンプルさが、四つ子素数を可変系素数の元祖でありながら最も有名にしているのでしょう。

 

では四つ子素数のデメリットは何でしょう。大きな欠点は無いに等しいですが、強いて挙げるなら数字が被るなどの理由により効率が4倍とまではいかないこと、その割に4つの素数が「重なる」必要があるため双子素数などと比べれば見つけにくいことでしょうか。

 

前者は、例えば7Q3432Xという四つ子素数のXに3を入れて使うことは同じ札が3枚必要となりあまりないといったものです。四つ子素数は変化させる部分が全て奇数なので、偶数消費型の素数では意図しない被りが減ってその強みが最大限に活かせることが分かります。

 

後者について、近い数字4つが全て素数になる確率は、(別の記事で詳しく説明したいところですが)ざっくり1つの数が素数になる場合の4乗となり、これは想像以上に小さいです。そのため、私の好きな7枚出し程度では数字の順番がバラバラなものしか見つからないことがあります(まあこれも少し増えると解決することもあるのですが)。他にも、超多枚で探索すると固定できる数字の並びが相対的に減ったり、計算量が爆発してそもそも単純な方法では見つけられなくなったりします。

 

とはいえ、総合的には四つ子素数は効率が良く、またトップクラスに覚えやすいため初心者にも最適です。好きな四つ子素数として5年間忘れなかった8T4X「八頭身」を挙げて次に進みます。

 

三つ子素数

次は、その四つ子素数を少し改変した三つ子素数です。似た名前になっている理由は、四つ子素数から選択肢を一つ減らしたものになっているからです。これについても古くから概念自体はあるようですが、ここではカステラさんの考えたもの、特に3,7,9をつけられるものをメインに紹介します。

https://graws188390.hatenablog.com/entry/2021/12/03/223443

 

三つ子素数のメリットとして、まずは四つ子素数よりも格段に個数が多いことが挙げられます。それでいて3つも素数が覚えられるというのはバランスが良い気がしますね。また、特につける3つの組み合わせを固定しない場合、JやKをつけるものを探すこともできます。

 

また、競技素数大富豪の上級者にとって、Aは革命時に小さい素数を出したり、2や3と組み合わせて絵札の代わりとしたりすることができる重要な札で、どちらかと言えば温存したいものです。そのため、特定の条件、革命用の素数や超多枚素数においては、3,7,9をつけるタイプの三つ子素数は、四つ子素数と比べほとんど使いやすさは変わりません。それで見つかりやすくなるのですから、ほとんど上位互換と言えるでしょう。

 

デメリットとして、3つの札の組み合わせが様々なものを覚える場合、混ざりやすいということはあると思います。

 

ということで、2021年から考察されていた三つ子素数が、2024年には新しい超多枚という可能性を手に入れてさらに流行することを期待し、次に進みます。

 

八方美人素数

今度は少し方向性を変えて、八方美人素数です。これはOTTYさんが考案したものですが、tatyamさんのブログが参考になるので載せておきます。

https://tatyam-prime.hatenablog.com/entry/2019/12/21/160201

 

八方美人素数は、Xに13種類の札のうち、全体が3の倍数にならない8種類を入れることができる可変系素数です。そのような札の候補が9種類あるものでもそのうちの8種類が素数であれば八方美人と呼ばれるそうですが、かなり覚えにくくなるのでここでは考えません。

 

メリットはやはり圧倒的な種類数です。可変系素数はやはり種類数が多い方がロマンがあります。8種類は正義です。

 

デメリットはやはりそのような数の組み合わせが極端に少ないことです。Xの位置が自由に変えられることである程度は可能性が上がっていますが、それでも7枚出し程度では全体で数えるほどしかありません。

 

それも実は10枚出しになると結構自由自在のようですが、少なくともnishimuraさんの素数探索では計算量が多すぎて見つからないはずです。tatyamさんは自身のアルゴリズム力と時間で殴って全探索したようですね。強すぎる。

 

それと、もう一つ競技素数大富豪においては使いづらい点として、Xには絵札と数札の両方が含まれるため桁数の把握が難しいこともあるでしょう。

 

ということで、使える場面は限られるものの、たくさん覚えて揃えば良い初手10枚出しなどにはかなり有効だと思います。

 

六方美人素数

さて、上の八方美人素数の一つの変種として、Xに絵札を入れないものを考えることができます。

 

自分で探索したので自作としても良いのかもしれませんが、nishimuraさんが言及していたので概念自体は以前からあると思いこちらで紹介しています。特に名前は見なかったのでここでは六方美人素数と呼ぶことにしましょう。前後左右上下、三次元的にいい顔をしていそうですね。

 

六方美人素数は、Xに1~9のうち合計が3の倍数にならないもの全てを入れることができる可変系素数です。そのような数は必ず6種類となっています。また、その特殊な例に岩淵夕希さんの「オロチ数」があります。六方美人素数については、Xが先頭に来るオロチ数とは異なり、八方美人素数のようにXはどこでも良いものとします。

 

メリットは、八方美人素数と比べ使いやすさはあまり変わらない割に、桁違いに数が多くなることです。Xに2もJも入れられるという状況は、素数の桁数を意識しづらくさせます。そこで、絵札を入れる可能性を捨ててしまうことで、便利さと見つけやすさを両立できるわけです。実際、9枚9桁の大きさがあれば六方美人素数もそれなりの頻度で現れます。使いやすいものを挙げておきます。

 

89X524167(3抜き)

95X487213(6)

4368X2517(9)

67X918243(5)

3196X5427(8)

5623478X9(1)

963X28571(4)

 

これらを覚えることで1種類足りない9枚出しが自由自在にできるようになります。また、この形の副産物として「抜いた数と3で割った余りが異なる数をXに入れられる」という覚え方ができるのも嬉しいところです。

 

六方美人素数のデメリットとしては、八方美人素数ほどではありませんがそれでも見つかりづらいことです。実際、9枚出しで順番をバラバラにすると組み合わせの数は相当に多いのですが、それでも上記の形で2や7を抜いたものはおそらく存在しません。

 

とはいえ、六方美人素数はある程度ロマンと使いやすさを両立していますし、またXの組み合わせが異なるため四つ子素数と差別化もできます。主に10枚前後のn枚n桁においてもっと探索されると面白いかもしれません。

 

たこあし素数

お次は少し変わってnishimuraさんのたこあし素数です。たこあし素数は、札を付け足す場所を選択肢ごとに変えることで素数を作りやすくしています。その意味では、狭義の可変系からは外れるのかもしれません。

 

札を付け足す場所を変えるというのは、ある数の並びに対し、1桁目、2桁目、と順番に数を挿入することにし、その数の並びは別に覚えるということです。詳しい説明については本人のこの記事にお任せし、一つ例を挙げておきます。

 

7-34356789

3-T-4356789

34-J-356789

343-8-56789

3435-5-6789

34356-2-789

343567-4-89

3435678-K-9

 

さしみ56789という並びに、7TJ8524Kと8種類の札を入れることができました。

 

メリットは、固定部に加え上の例では7TJ8524Kという8文字の並びを覚えるだけで、8個の素数を覚えることができるという、効率の良さです。さらに、それぞれの桁に入る数は被りが少なければ何を選んでも良いため、八方美人素数などと比べれば格段に見つかりやすいです。

 

デメリットは覚えた文字列を素数に直すのが慣れないと難しそうなことでしょうか。追加の札を何桁目に入れるかを判断する必要があるからです。また、素数大富豪オンラインなどに限りますが、同じ系列の別の素数に変更するのに時間がかかります(四つ子素数など最後の桁を変更するものは組み換えが容易です)。

 

もう一つ、必ずしも入れたい札を含む並びを得られないという問題もあるようです。ただ、こちらはその分固定する部分の自由度が高いため、あまり困らない気もします。

 

同じ系列の素数の中で、札を入れる場所が違うというのは他の可変系素数にはなく斬新です。一方でそれが使いにくさに繋がる面もあります。個人的にはかなり面白いと思っているので、nishimuraさんの今後の研究に期待するところです。

 

絵札可変系素数

もう一つ、nishimuraさんの考えた可変系素数と呼べるものがあります。それは、絵札可変系素数です。その名の通り、数札の並びは固定して絵札の組み合わせを変えられるものになっていて、ここでは最も代表的なQJ/TK/QK/JJ/KKの5つを付けられるものを紹介します。

https://searial.web.fc2.com/tools/sosuqjtk.html

 

メリットは一組5個という効率の良さもそうですが、数札の並びを覚えるだけで絵札を含む素数が覚えられる点が他に少ないです。語呂の中に絵札が混ざると記憶がごちゃっとしてしまう人にはおすすめですね。また、絵札がほどよく含まれているため、上の記事で紹介されている通り初手に揃いやすく、相手が知っている素数で返せないことを期待して9枚出しする戦術があります。

 

デメリットはどうしても数が少ないことで、固定部を7枚にしても理想の組み合わせが見つかるとは限りません。また、当たり前ですがn枚n桁の素数を覚えるのには使えません。

 

個人的には、絵札が最後に並ぶ形が広まっている超多枚と相性が良いのではないかと思います。五つ子だと数札をかなり乱雑にする必要がありそうですが、一組3つくらいなら上手い形が見つかりそうです。こちらも今後の研究に期待し、次に進みます。

 

自作素数

さて、今度は私がこれまでに自作した可変系素数、二種類について解説します。どちらも素数が多くなるような工夫が施されています。

 

21素数

まずはマスプライム杯直後に作り、知識が少ない間大きな支えとなった21素数です。こちらは、ある数の並びの先頭に21の倍数、Q6までの6つを付けられる可変系素数です。以下にいくつか例を示します。

 

X499

X3461 (三四郎の孫素数)

X476J

XQQ31

 

例えばX499であれば21499,42499,63499,84499,T5499,Q6499が素数になります。

 

メリットはなんといっても6個一組になっていることですが、地味に偶数の消費が多くなりがちな点も嬉しいです。可変部が2枚である程度バラバラなので、固定部が揃えば出しやすいのも便利です。

 

デメリットはやはり見つかりづらいことになってしまいます。同じ組であればどの数も3と7で割ったあまりが一致するため、全体としては何倍か素数になりやすいのが21という数字の効果です。しかし、それ以上に6個とも素数という制約は厳しいのです。実際、固定部が4枚までのものは上の4つしかなく、実用的なのは9枚出し以上になります。

 

今はあまり使わなくなってしまいましたが、個人的に思い入れのある素数です。こういうことを試してみた、という記録としては有益だと思うので紹介させていただきました。

 

6006素数

同じ組の素数同士の差がいくつかの素数の倍数になっていることを利用する発想は同じで、先ほどの21素数よりもパワーアップしたのがこの6006素数です。名前の通り差が6006の等差数列になっていて、3,7,11,13で割ったあまりが共通しています。さらに、反省を生かし3個一組程度に抑えることで、不変部が短くても見つかりやすくなっています。

 

T2J7:トニーじゃな

T8Q3:転売兄さん

J4Q9:いい、よい肉

 

上の3つを末尾に付けるというのが基本的な構成です。前述の工夫には一定の効果があったようで、不変部を被りのない4枚4桁に絞っても20個以上あります(これは5枚出し三つ子素数に近い見つかりやすさです)。いくつか挙げておきます。

 

85始まり:8524,8564

ハム肉:8629

23入り:2356,5239,2693,8932,3782 

1終わり:9641,8251,6391

 

気付きましたでしょうか、とはもはや聞く必要もないでしょう。このアドベントカレンダーのテーマ、ハム肉はなんと6006素数にできるのです! ということで、ぜひ8629J4Q9(ハム肉いいよい肉)だけ覚えていってください。

 

メリットも挙げておきましょう。見つかりやすさと効率のバランスは取れていると思います。やはり時代は三つ子素数なのかもしれませんね。とにかく数を覚えたい初手8~10枚出し、あるいは超多枚に応用すると面白いかもしれません。

 

超多枚については3TKさんのサマポケ超多枚と同じやり方がハマると思っています。

https://hana3101382283.hatenablog.com/entry/2023/12/31/shiroha

 

9876543QK-(5枚)-X Xは上の可変部

 

似た感じで、この形の18枚出しはかなり使える、と思って探索までしたのですが、覚えるのを諦めています。残念。

 

デメリットは中途半端に数札と絵札が混ざっていて、可変部と不変部が競合してしまうことです。どの札を使うのかが分かりづらいため、揃っているかの判断が難しいわけですね。絵札が可変部にあることはなかなかデメリットが多く難しいです。

 

これからの可変系

最後に、結局何が強いの? ということについて簡潔にまとめさせていただきます。

 

まず、四つ子素数はその分かりやすさ、現在の情報の多さから広く使われ続けると思います。この記事を最初に書いた後ですが、四つ子素数大富豪という四つ子素数しか出せない素数大富豪が流行しました。それによってさらに地位が上昇した面もあると思います。

 

次に、三つ子素数をはじめとする3個一組の可変系素数は、発展途上ですが開拓すればとても強いと思います。覚え方に工夫が必要なものの、特に超多枚で、四つ子素数を超えるバランスの良さをポテンシャルとして秘めていると思います。

 

もし初心者の方が可変系素数を新しく作るとしても、三つ子素数の応用をおすすめします。やり方は簡単で、2~4枚程度の並び3つを可変部として末尾に置くことにするだけです。あとはnishimuraさんの手札探索で探索してみましょう。3で割ったあまりが全部違うとできませんが、どれか共通していれば結構な数出てくるはずです。例えば、343、523、593の3つを付けられる4桁は、9438などたくさん見つかります。

 

最後になりますが、皆さん、5枚以上の不変部って本当に覚えられますか? 私はよほど規則性がないと無理だと思っています。ということで、記事のテーマが崩壊してしまいますが、可変系素数よりも楽な素数の覚え方を一つ紹介しておきます。

 

それは、不変部に相当する部分を好きなように決めてしまい、それに付けられる3枚以下の並びをたくさん覚えることです。例えば、この記事で、私は大量の4枚4桁を、23終わりや47始まりのようにグループ分けして覚えています。

https://greenplus.hatenablog.com/entry/2023/12/04/000000

 

実験してみると分かるのですが、3枚自由にくっつけていいだけで大量に素数が見つかります。それもそのはず、4個一組が3個一組になるだけで見つかりやすくなるのですから、1個一組ともなれば素数だらけです。というか、そちらが本来の姿です。

 

そして、何十個も素数が見つかれば、当然覚えやすいものを選ぶのも自由です。語呂を付けられるもの、たまたま1違いのもの、好きなように覚え方を工夫することができます。

 

ちなみに、この覚え方は、効率を求めて行う人が少ないだけで、簡単なので昔からあります。コックさん素数をはじめとした語呂素数も、意外と合理性があるわけですね。

https://nisei.hatenablog.com/entry/167593

 

おわりに

以下はアドベントカレンダー当時の内容です。

 

まだ書き終わっていません、ごめんなさい! 締め切りパワーで今日は結構進んだのですが、計画性が足りませんでした。25日までには完成させたいです。

 

明日ははなぶさんによる「最近の素数大富豪活動とお知らせ」です。素数大富豪で遊ぼう回には私も参加させていただきました。また来年も新たなイベントがあるのでしょうか? 楽しみです。

 

おわりに2

やっと書き終わりました。結局2か月も遅れてしまったようですね。また、種類ごとにかなりバラバラな書き方をしてしまいました。もう少し可変系素数全体に共通する概念を抽出して、個別の素数についても何に言及するかを統一した方が、全体としての見通しは良くなるはずです。

 

ただ、言いたいことは全て書けたと思いますし、せっかくアドベントカレンダーの記事として書いたものまで一から作り直すのもめんどい違うと思ったので、これにて完成とさせていただきます。読みづらくなってしまった分、内容に質問などありましたらできる限りの対応をしたいです。

 

また、当初は、n個一組の素数がどれくらいの割合で出現するかというデータや、それを踏まえてどのような工夫ができるかまで書くつもりでした。これについてはまた別の記事にできればと思っています。

 

それでは、更新分も含め最後までお読みいただき、ありがとうございました!