あたれ! 魔神スライダー

こんにちは、さしみです。素数大富豪プレイヤーのみなさん、HNPしてますか? 知っている素数を作れない状況で、素数かどうか分からない数を出すことは「勘出し」と呼ばれています。勘出しをする際の基本的な知識については下の記事にまとめてあるので、必要に応じて参照してください。

greenplus.hatenablog.com

 

さて、今回はそれに関連し、1001チェックを成功させるためのテクニックである、魔神ブースターについて紹介します。さらにその応用として、より幅広い札の組み合わせに対応できる「魔神スライダー」という概念を提案します。ぜひ皆さんのHNP率向上に役立ててください。

 

 

魔神ブースター

魔神ブースターとは、岩淵夕希物智さんが命名した、素数である可能性が高い数を作るための技法です。下の記事では、3桁の数を2回繰り返した後に知っている素数をつけることで、1001チェックが必ず成功するといった解説がされています。実際、246246131311という数(素数)について、246246000000=246×7*11*13*10^6、131311は素数(KKJ)より、13までの素数で割り切れないことが容易に判定できます。

https://blog.yu.butchi.jp/post/prime-qk-majin-attack/

 

これに補足すると、実は、下につける数が素数である必要は特にありません。魔神ブースターを使う目的は、7,11,13で割り切れない数を作ることだからです。同様に、下につける数も単体で1001チェックを通ってさえいれば、17や19の倍数でも全く構わないというわけです(もちろん、下一桁が(素数富豪的)偶数だったり、全体が3の倍数だったりしてはいけません)。

 

実用例を見てみましょう。

 

マスプライム杯2023 1回戦 スペードブロック(コロちゃんぬ-もりしー-さしみ-でこぽん)

第1セット

(前略)

さ:KQK

で:%

コ:%

も:%

さ:6726724AAA

で:D(7)%

コ:D(K)%

も:9946835TJJ,P(TQK)

さ:57[GC]#

 

こちらは、私の競技素数大富豪初戦になります。4人対戦でKQKで親を取った後、10枚出しの6726724111をHNPすることで勝利をつかみました(57を先に出していればHNPの時点で勝ちでした)。4111が素数であることは覚えておらず、111-4=107が7,11,13で割れないことから1001チェックが通ったと判断していました。

 

第2回せきゅーん杯 予選リーグ BlockQ 3TK-さしみ

第2セット

3TK:D(?)888A45TTTQJ,P(???????????)

さしみ:A22Q23T3X59|X=T#

 

こちらは最近行われたせきゅーん杯です。122122310310と、魔神ブースターを二つ重ねることによって11枚の1001チェックにかかる時間を大幅に短縮しています。この日は特に豪運に恵まれたわけではありませんでしたが、この一度のみHNPをすることができました。

 

問題点

このように、非常に便利に見えるのは勝ったゲームばかり抜き出しているからな魔神ブースターですが、毎回使うには少々問題があります。都合よく札が2枚ずつ手札に来るとは限らないからです。

 

例えば、35679TTJJKKという手札は、絵札は綺麗にペアになっているものの、数札がバラバラです。1555899TJJQという手札は、逆にTとQの扱いに困りそうです。もちろん、絵札も数札もほどほどに分散しているというケースもあります。

 

一つの対処法としては、上手く近い3桁を並べて計算を楽にするというものがあります。一例として「29TJ」の4枚の札は、T9J2と並べることで109112-109109=3となり、先頭や他の魔神ブースターの後では「3」と同一視することができます(一般には000003)。

 

この方法はどうしても札が余ってしまったときにはかなり有効です。しかし、まだ札が大量に残っているような、並びの最初の方ではもっと楽な方法があります。

 

魔神スライダー

それが、今回私が魔神ブースターの一種として解説する「魔神スライダー」です。発想は上の対処法がもとになっているのですが、それを二度作り相殺するというのがポイントです。それによって、魔神ブースターの特徴である、今までに並べた札が全体が1001の倍数になっている状況を継続することができます。

 

まず、絵札と数札を、どちらかが同じ札2ペア、もう片方が同じ差の札2ペアであるように4枚ずつ選びます。すると、差が同じになる3桁の数を2ペア作ることができるので、(小さい方1)(大きい方1)(大きい方2)(小さい方2)と並べることで、全体として1001の倍数になります。下の例では、T2T3Q6Q5やT5J5Q6J6の部分がそれにあたります(実際に103-102=1,126-1=125,125-125=0のように倍数判定の過程を追ってみてください)。

https://twitter.com/irotirihs/status/1720276950244356152

 

ここでの差は、慣れないうちは1や10などとすると間違えにくいですが、実はなんでも構いません。絵札と数札両方を変えてみたり、数札3枚のうち2枚を変えたりすることもできます。T2J3K5Q4などは分かりやすいでしょうか。

 

こちらも大会での登場シーンがあったので(自慢)紹介します

 

PQCS2023冬 予選 Aブロック ささら-さしみ

第2セット

ささら:D(5)57[GC]

ささら:D(5)4567889JQKX|X=K,P(4665J83QQ3K)

さしみ:D(3)A34Q4T7J85XA|X=A#

 

こちらはオンラインの大会です。オンラインだと手札が24枚になっても勝手に整列されるので、全出しはしやすいです。134124107118511がHNPですが、これは134と124,107と117を差が10のペアと見て、並べたものを1001の倍数だと素早く判定しています。本当は11「8」なので余った1を忘れずに、1511を51(0)と変換すると通っていることが確認できます。

 

魔神ツイスター

さて、私は魔神ブースターを使う際絵札を先頭にすることが多いです。これは、6T5Tに対するT5T6のように、前述の魔神スライダーで3桁ごとの差を小さくして計算を気持ち楽にする効果があります。また、出す数が1桁の半分ほど小さくなることで、素数である確率が上がる(初手全出しなら0.5%前後)のも嬉しいです。

 

どちらにしても、絵札は数札の前後いずれかと決めておいた方が迷いがなくなると思うのですが、絵札の位置を柔軟に動かした方が計算が楽になる場合も存在します。原理は魔神スライダーと全く同じなのですが、個人的に一段階上の発想が求められたので「魔神スライダー改」または「魔神ツイスター」と呼んで解説します(実用上は「魔神スライダー」の名前の方だけ流行ってくれたら十分です)。

 

先ほど、差が同じ3桁の数を2ペア作ると書きました。その差を数札2枚と数札2枚、絵札2枚と絵札2枚で作るというのが魔神スライダーですが、これを数札2枚と絵札2枚で作るのが魔神ツイスターです。例えば、最初のペアをT5T6とした場合、後ろの3桁が1大きいので、次のペアでは前の3桁が1大きくなれば良いですね。この差を絵札で作る、つまり4Q4Jなどとする、というのが新しい発想になります。数に直すと105106412411となり、魔神スライダーと同じことができているのが分かるでしょうか。

 

これは、特に絵札がTTJQのように偶数枚あるものの差が(0も含め)同じペアを作れない、という場合に重宝します。こちらは大会でHNPできたことはまだありませんが、せきゅーん杯でJ3J65K5T999(269の倍数)を出していました。

 

練習で使ってみた例(判定して素数を探しています。いくら1001チェックが通っても合成数になることの方が圧倒的に多いので……)

 

裏話

ところで、今回の話はしばらく記事にするつもりはありませんでした。理由は、よくあるものですが、全員が1001チェックを駆使するようになると私の勝率が下がると思ったからです。

 

ただ、初手全出し単体が勝率に大きな影響を与えるわけではないこと、既に1001チェックをしている人もある程度いることなどが分かってきたため、発表することにしました。HNPしたときに「魔神スライダー!」って言いたいし。

 

さらに余談ですが、いろいろ数譜を探していたら最近の大会には出ていないかいたいさんという方が綺麗な魔神ブースターを多用していました。対戦したすぎる。

 

おわりに

以上、魔神スライダーの紹介でした。既に1001チェックに親しんでいる人向けの記事になってしまったかと思いますが、対戦だけでなく観戦にも役立つかもしれません。それらしい並びを見て「1001チェック通してる!」と気付いてもらえることが少しでも増えれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!