素数大富豪のユニークスキル 1%の世界

こんにちは、さしみです。2024年〜2025年の素数大富豪においては、勝率に1%程度寄与する戦術や知識の集合が複数提案されています。主にmickeyさんがこのようなものを大きく取り上げていた一方で、当初私はその影響を小さく見積もっていました。しかし、後に、トッププレイヤー同士の戦いでは無視できないものである、と結論付けるに至りました。

 

この記事では、そのような戦術を、上級者の中でも必須とはされないこと、特定のプレイヤーの強みとしてゲームを盛り上げる要素となりうることから「ユニークスキル」と名づけます。そして、プレイヤーの実力や戦術の強さを議論するため、観戦を楽しむためといった観点から、ユニークスキルの前提と実例を紹介します。

 

ユニークスキルとは

素数大富豪におけるユニークスキルを「コストパフォーマンスの観点からトッププレイヤーの中でも全員が習得することを求められない特定の知識や技術」と大まかに定義します。

 

そして、2025年現在のトッププレイヤーは1%単位の勝率を争って戦っている、というのがこの記事で最も言いたいことになります。そのため、各ユニークスキルの勝率への貢献も、1%のオーダーになります。私は、勝率への1%の貢献を「ユニークスキル1個分」と呼ぶこともあります。

 

一方で、ある程度の練習により勝率に5%単位の貢献を与える知識や技術も存在します。overKJQJや、初手に出す6〜9枚出しの最低限の運用がそれに該当するでしょう。これらを総合して、著しく練度が足りていない場合、そのプレイヤーは勝率において大きく損をして、トッププレイヤーからは外れることになります。あえて言えば、5%,10%の勝率の差というのは現在では大きな実力差として扱われるわけです。

 

このような影響の大きい「スキル」は、今回の定義によるユニークスキルからは自動的に外れます。トッププレイヤーから見るとあまりにも習得による勝率への影響が大きいため、全員が覚えることを求められるからです。

 

ユニークスキルの具体例

初手の絵札攻勢

初手の絵札攻勢とは、先手で配られた手札に絵札が多いとき、主に絵札を5枚以上使う素数を出すものです。相手が同じ枚数でより大きな素数を返せない可能性が高いため、残りで即座に上がるのが狙いです。同じ絵札5枚の組み合わせでも、6枚11桁は揃いやすく残りで上がりづらい、8枚13桁は揃いづらいが残りで上がりやすいといった違いがあります。

 

トッププレイヤーは主に6枚11桁をある程度覚えているのが標準的ですが、絵札5枚以上の手札を高確率で組み切るには最低限を超えた知識が必要になるため、これは高いレベルに達すればユニークスキルに相当します。

 

初手の枚数攻勢

初手の枚数攻勢とは、先手が主に9~10枚出しの素数を出すものです。相手の11~12枚の手札には同じ枚数で既知の素数がない可能性が高く、相手がパスしたりHNPに失敗したりすれば残りで即座に上がるのが狙いです。

 

トッププレイヤーは四つ子素数や全出し後の戦術のための9枚9桁を中心にある程度の9枚出し以上を覚えているのが標準的ですが、中途半端な偏りの弱い手札から勝てる素数を大量に覚えるのは難しく、これもレベルによりユニークスキルに相当します。札に偏りのある素数は個性が出やすいため、まさにユニークスキルらしい知識が見られる場でもあります。

 

全出し後のラリー戦術(5~7枚出し)

これもトッププレイヤーにとっては標準的な戦術ですが、相手とのリソースが拮抗しているかわずかに自分が上回るときに勝つ技術はユニークスキルと言えます。

 

全出し後のオーソ戦術(9~10枚出し)

ラリーと比べ狭く深い知識が要求される戦術です。絵札の枚数が多ければ勝てるため他の戦術と被らないシチュエーションも多いです。初手の枚数攻勢と同じく、札の偏りがあるときの9枚9桁などの知識は全てのトッププレイヤーに備わっているものではなく、ユニークスキルと呼べます。

 

超多枚出し

超多枚出しとは、全出し後の24~30枚の手札から、主に18枚以上の素数を出すものです。初手の枚数攻勢と同様に相手が同じ枚数を用意できない、あるいはそもそもほとんど知らない可能性が高く、通れば即座に上がるのが狙いです。

 

mickeyさん、3TKさんの型を始め、徐々に最低限の超多枚、また最低限の超多枚に返すための素数がトッププレイヤーに浸透してきています。しかし、それを積極的に武器にでき、不利な手札から一定の勝率を稼げるほどの知識は、現在でも十分にユニークスキルに相当します。

 

初手からの合成数による奇襲

合成数による奇襲とは、n枚出しをした後、それより多い枚数の手札からn枚の合成数出しを行うことにより上がるというものです。最初の素数に対して相手が警戒せずに小さな素数を返してきた場合は、手札の強さを無視して上がることができるという強みがあります。初手からは3枚出し→8~9枚消費3枚出し合成数という流れが最も多いようです。

 

これを行うには単なる合成数の知識だけでなく、合成数を手札から見つけて奇襲に結びつけるという運用が必要になります。通常の切り札を用いた組み切りとパターンが異なるほか、合成数素数よりも見つけづらいためです。それゆえに熟練者が少なく、その効果も無視できない一方決定的ではないため、ユニークスキルと呼べます。

 

高度な素数判定

初手の全出しで1001チェックを行い、7,11,13で割り切れない数を出すことで、それが素数である割合は(HNP確率)は約4%上昇します。また、HNPすると勝てるゲームにおいては、トッププレイヤーでも最小で6桁程度のHNPを試みることがあり、そのときは17以上の倍数判定の効果も大きくなります。

 

初手のHNP確率上昇について、HNPが必要になるゲームの割合(約半分)、HNPが失敗したときの勝率(約半分)を考えると勝率への寄与は1/4ほどになります。一方で全出し後やそれ以外の場合にもある程度HNPが求められることを考え、1001チェックの勝率への寄与は1~2%、人類最強クラスの計算力のそれはさらに1~2%と見積もっています。この効果の大きさと、計算の難しさから、高度な素数判定もユニークスキルと呼ぶことができます。

 

にばいめーかー

にばいめーかーとは、初手からq=2×pの形の合成数出しを組み、即座に上がるというものです。この合成数出しは覚えていなくてもパズルのようにしてその場で組み上げることができ、1000通り単位(ジョーカーを考慮しない)の膨大な手札の組み合わせから上がるチャンスがあります。

 

にばいめーかーのパズルの部分は習得に素数大富豪とあまり関係のない練習が必要であるため、実戦で使用できるプレイヤーが限られています。また、通常不利な手札で多く出現するため、他の戦術と被らないのがメリットですが、出現率自体は1%程度のため、その重要性はユニークスキルと言える程度です。

 

将来のユニークスキル

「トッププレイヤーは1%単位の勝率を争って戦っている」というのはあくまでも2025年現在の話です。もし素数大富豪の攻略が今よりも進み、現在はユニークスキルとされる領域を習得し尽くしたプレイヤーが何人も出現したら、その数字はもう一段階細かいところに移ることになります。すなわち、0.1%,0.2%の勝率のために大きな努力がなされるようになり、1%,2%の勝率の差は隔絶した実力差として扱われるようになるでしょう。

 

息苦しい。そういう気持ちもあると思います。しかし、将来においてもきっと時のトッププレイヤーが時のユニークスキルと、それに至るまでの過程の面白さを、見る人に届けてくれると信じています。そして、現在においてはそれは現在のトッププレイヤーの責任でもあると思います。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。また読ませる気のない説明不足な記事を書いてしまった気がします。ただし、この記事の目的は

・トッププレイヤーの見ている、1%の勝率を取り合う世界を伝える

・戦術を研究するプレイヤーに、戦術がどれだけ効果的かを適切に評価してもらえるようにする

・ユニークスキルという概念を紹介し観戦者に面白いと思ってもらう

・ユニークスキルと呼べる素晴らしい強みをいくつも持ちながらそれ以前の段階で損をしているためにトッププレイヤーに届かないプレイヤーに、この領域を見てみたい、と奮起してもらう

辺りで、それなら伝わらないこともないかなと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

素数大富豪リンク集

素数大富豪プレイヤー・研究家のさしみです。素数大富豪の役立つリンクをまとめます。

 

 

ルールを知りたい

素数大富豪のルールは以下のリンクが参考になります。どれも本質的にはほぼ変わらず、最も一般的なルールを記述しています。個人的なおすすめは素数大富豪普及協会のものです。

素数大富豪普及協会ルール

primeqk.themedia.jp

素数大富豪普及協会のページです。素数大富豪オンラインの使い方にも触れてあります。

Wikipediaルール

素数大富豪 - Wikipedia

Wikipediaのページです。

旧公式ルール

integers.hatenablog.com

素数大富豪考案者のせきゅーん氏が書いたルールです。遊ぶにはあまり適しませんが数学の言葉を用いて詳細に記述されています。2025年に本人によって公式という位置付けが解除されました。

 

とりあえず遊んでみたい

素数大富豪で遊んでみるために必要なリンクを紹介します。

素数大富豪オンライン

permil.net

最もよく使われる素数大富豪のオンライン対戦プラットフォーム「素数大富豪オンライン」です。シンプルながら使いやすく、日に数人〜十数人程度が利用しています。

素数大富豪オンライン完全マニュアル

greenplus.hatenablog.com

素数大富豪オンラインの操作方法の説明です。

素数大富豪CPU

素数大富豪ver4

一人でCPUと対戦できるサイトです。初心者向けで、いつでも遊べるのが利点です。ver.4が一般的ですが、強すぎると感じた場合はver.1から試しても良いでしょう。これの開発者のnishimuraさんは、他にもこれ以降で解説する様々なツールを作っています。

素数判定

シンプル素数チェッカー

トランプを使って素数大富豪をする際には、出された数が素数かを判定することができます。「素数判定」などで検索すると様々なサイトがありますが、ブラウザで動く中で最も使いやすそうなものを載せておきます。慣れている人はアプリを使うことが多いです。

 

出せる素数を知りたい

素数大富豪を始める上で必須の素数表を紹介します。

これから素数大富豪始める人へ

searial.web.fc2.com

ここで紹介されている、みうらさんによる「素数大富豪のための素数表」が参考になります。記事のメインコンテンツも、少し慣れてきた人向けの4枚出しの覚え方を取り上げており、レベルアップに適しています。

 

素数を自分で探したい

出せる素数を自分で探すためのツールや資料を紹介します。プログラムを自力で書く人もおり、慣れているならおすすめです。

素数探索

素数大富豪 手札探索

超重要。nishimuraさんによる、素数大富豪で出せる素数を探すツールです。枚数を決め、手札を入力するとその中から出せる素数の一覧が表示されます。この札を多めに使いたい、ペアを探したいなど細かい要望にも応えてくれます。

素数大富豪Wiki

primedaifugo.fandom.com

素数大富豪Wiki素数一覧のページです。探索の手間がなく、とにかく大量に素数が載っているため、眺めて目についたものを採用するのに適しています。特に四つ子素数がおすすめです。

 

上がれなくて困ってる!

素数大富豪をやってみたけどそもそも上がることができないときに読む記事を紹介します。

強くなれるQの素数

greenplus.hatenablog.com

素数大富豪の初心者にとって最も使いづらい札であるQを含む素数とその覚え方を解説した記事です。読めば手札が余って仕方なくなることは減ること間違いなしです。

 

強くなりたい

素数大富豪が上達するのに役立つ記事を紹介します。

立ち回りのコツ

prime-hu.hatenablog.com

2020年に書かれた記事ですが、素数大富豪の立ち回りの基本を良くカバーしています。まずはこれを読んでおくと、後々まで役に立ちます。

先手における考え方

hana3101382283.hatenablog.com

hana3101382283.hatenablog.com

トッププレイヤーの3TKさんによる、戦術選択の網羅的な記事です。初心者向けではありませんが、最終到達点としてガチ勢の考え方を知ることができます。習得する戦術を探す上での参考にもなります。

4枚出し

prm9973.hatenablog.com

もりしーさんによる、4枚出し戦法の記事です。内容が古い(忠実に実行しても上級者には通用しません!)ですが、4枚出しを2回して残りで上がる流れ自体は必ず触れるものであること、考え方が興味深いことから掲載しました。二刀流とも関係があります。

二刀流

hana3101382283.hatenablog.com

3TKさんによる、二刀流という戦術の記事です。初手からの3,4枚出し戦術を実行する上で、相手の手札を増やす動きに対処するための手札の組み方と必要な素数が紹介されています。パターンが分かりやすいほか、決まれば誰が相手でも勝てるので初級者におすすめです。

 

大会に出たい

現在定期的に開催されている主な大会を紹介します。

マスプライム杯

mathp-cup.localinfo.jp

最も歴史の長い、年1回9月ごろ開催の対面大会、マスプライム杯のページです。2024年、2025年はマスぴよ杯というガチ勢のいない枠があるため、初めてでも参加しやすくなっています。

梅森戦

https://x.com/baishinsen

年2期開催のオンライン大会、梅森戦のTwitterアカウントです。予選は決まった日に試合に参加する必要がないのが特徴です。

PQCS

https://x.com/PQChampionShips

年2回開催のオンライン大会、PQCSのTwitterアカウントです。予選が必ず1日で終わるほか、自動的に各参加者の予定に合わせた日程に振り分けられるのが特徴です。

はち杯

https://x.com/8cup_pQK

年複数回、不定期開催のオンライン大会、はち杯のTwitterアカウントです。通常のタイトル戦よりもフリーな立ち位置で、飛び入り参加も可能です。特にライト級は試合数が少なく、初心者にもおすすめです。プロフィールに記録へのリンクもあります。

 

観戦したい

観戦するためのリンクや、対戦の解説記事を紹介します。

マスプライム杯配信アーカイブ

www.youtube.com

マスプライム杯は一部の試合、特に準決勝・決勝は必ず配信されており、後からでも大会の雰囲気を感じることができます。解説も入っており、初心者でも素数大富豪のレベルの高い試合の面白さが分かると思います。

自戦記(PQCS2024冬)

greenplus.hatenablog.com

大会の優勝者などが試合中に考えていたことを記事にすることがあります。各プレイヤーのブログから探すと見つかりやすいですが、例としてさしみのものを挙げています。

ウイニングプライム一覧

primedaifugo.fandom.com

大会の優勝者一覧を全て挙げているなぜか唯一のページです。

素数大富豪EloRating

素数大富豪EloRating - Google スプレッドシート

カステラさんが上げている素数大富豪大会のレーティングのスプレッドシートです。ほぼ全ての大会の試合から勝敗の記録を抽出しています。

プレイヤーブログ一覧

graws188390.hatenablog.com

一旦カステラさんのブログのみ挙げておきます。素数大富豪の大会の統計など、俯瞰した内容が多いです。ブログの「リンク」欄に多くのプレイヤーのブログが紹介されています。

 

研究したい

研究のための資料やツール、進行中の研究テーマを紹介します。

素数大富豪シミュレーション

素数大富豪シミュレーション

nishimuraさんによる、一定枚数ドローしたときに特定の組み合わせが揃う確率をモンテカルロ法(大量のシミュレーション)で求められるツールです。細かい指定ができ、確率を考慮した戦術研究もこれ一つでほぼ完結します。

最大素数大富豪合成数の探索

hachi-2718.hatenablog.com

はちさんによる、トランプ54枚の中から素数大富豪で出せる最大の合成数の探索です。素数大富豪の対戦自体とは直接関係ありませんが、研究テーマとして面白いです。

 

読み物

小説などの読み物を紹介します。

QK部

kakuyomu.jp

素数大富豪をテーマにしたきらら風の小説です。これを読んで素数大富豪を始めたという人がいるくらい面白いです。実はKADOKAWAから児童書としてリメイクされて出版されています。

 

以上です。これを載せてほしい! というものがあれば @irotirihs まで連絡ください。

素数大富豪オンライン完全マニュアル

素数大富豪プレイヤー・研究家のさしみです。素数大富豪オンラインの使い方を解説します。

 

 

素数大富豪オンラインマニュアル

トップページ・名前の入力

素数大富豪オンライン(permil.net/pd/)にアクセスすると、上のような画面が表示されます。これが、素数大富豪オンラインのトップページです。仮にpermil.netの方にアクセスした場合は「素数大富豪オンライン」を押すことでこのページに移ることができます。

 

ここでは、名前の入力と部屋選択画面への移動を行うことができます。名前は好きなものを入力できます。また「ログイン」と書いてありますがアカウントは存在せず、毎回別の名前を入力することができます。名前を入力しなかった場合は「guestXXXX」(XXXXはランダムな4桁の数字)という名前が自動的につけられます。

 

なお「ルール」というリンクがありますがやや情報が古いです。簡単なルールについては素数大富豪普及協会のルール説明、役立つリンク集については以下の「リンク集」を参照してください。

https://primeqk.themedia.jp/pages/4500251/rules

greenplus.hatenablog.com

 

部屋選択画面

「ログイン」を押すと上のような画面に変わります。これが部屋選択画面です。「接続: X」とは、現在その部屋にX人が入っていることを表します。枠内を押すと、対応する部屋に移動します。この画面では9段2列の18個の部屋があり(アップデートによって変わる可能性があります)部屋の種類ごとに異なるルールが設定されています。

 

まず、部屋1~9と書いてあるものが通常のルールです。トランプ1組54枚を使用し、配られる手札は11枚(5人以上の場合7枚)、一手の制限時間は60秒です。

 

ペナルティ1枚の部屋では、間違えた素数合成数出しをしたときに増える手札が1枚になります。積極的に知らない素数にチャレンジできるほか、手札を増やす戦略が存在しないため比較的初心者向けです。

 

偶数半減の部屋では2,4,6,8,10,Qの札がそれぞれ2枚になります。2枚出しを繰り返しても上がりやすいため、初心者におすすめです。

 

手札5枚(鳥の顔文字)とある部屋は、札幌杯のシマエナガリーグで使われたルールが採用され、配られる手札が5枚、ペナルティが1枚になります。また、制限時間も120秒に伸びているようです。ゲーム性はかなり変わりますが入門には適しています。

 

観戦・参加・開始

部屋に入った状態では上のような画面になり、ここから対戦中も基本的なレイアウトは変わりません。灰色の枠の下か右に部屋にいるプレイヤーの名前が一覧で表示されます。「参加する」を押すと対戦待ち状態になり、名前の先頭に「*」がつきます。「観戦する」を押すと対戦待ちが解除されます。

 

対戦待ち状態のプレイヤーは「開始する」を押すことができ、そうすると対戦待ち状態のプレイヤー全員で対戦が始まります。一人での対戦も開始することは可能です。手札が足りなくなるほど人が多すぎると開始ができなくなります。

 

「退室する」を押すとその部屋から退出し、部屋選択画面に戻ります。

 

チャット

灰色の枠の下にある白い一行分の枠は、チャットの入力欄です。そこを押して文字を入力し、改行を押すと部屋に入っている他のプレイヤー全員にメッセージを送ることができます。その下にある背景が薄い黄色の部分はチャットの履歴で、他にも対戦の進行や入室・退室の情報が表示されます。

 

対戦中・手番と時間

対戦中は上のような画面になります。中央には山札の数と場に出ている数が表示され、その上に現在の手番の残り時間、下に手番のプレイヤーが表示されます。自分の手番のときのみ数を出すことができますが、手札の操作はそれ以外の時間でも可能です。

 

残り時間が0秒になると(厳密には「0秒」から一拍置くと)強制的にパスしたのと同じ状態になります。自動的に出そうとしていた数が出されることはありません。

 

手札ゾーン・ドロー

手札は対戦中の画面下部の青い枠の中(以下、手札ゾーン)に表示されます。対戦中の画面中央の裏になったトランプの画像を押すと、手札を1枚ドローすることができます。

 

素数ゾーン・素数出し

手札ゾーンの手札を押すと、その札が赤い枠の中(以下、素数ゾーン)に移動します。素数ゾーンは出す素数を作る場で、ここにある数を出すことができます。移動させた札は新しいものが右になるように追加されていきます。素数ゾーンの手札は、位置に関係なく押すことで青い枠に戻せます。「場に出す」を押すことで、素数ゾーンの数が出されます。

 

素因数ゾーン・合成数出し

素数ゾーンに何かあるときには「分解する」ボタンが表示されます。押すと画像のように新たに黄色い枠が表示されます。また、手札ゾーンからの手札の移動先が黄色い枠の中(以下、素因数ゾーン)になります。素因数ゾーンには手札のほか、ボタンを用いて「×」「^」(累乗の記号)を配置することができ、この状態で「場に出す」を押すと、ここの計算式を用いた合成数出しをすることができます。ルール上成功する素因数分解のやり方は、ルールを参照してください。

 

ジョーカー

数字が書いておらず、中央に人の絵が描かれた札はジョーカーです。ジョーカーは使いたい位置に配置した後「場に出す」を押した際に、画像のような数の指定を求められます。0~13までの選択肢を指定するタイプのボタンです。2枚使う場合は、色と位置を頼りに2枚指定してください。

 

革命

1729が出されてラマヌジャン革命が起こると、背景が紫色になります。

 

数譜

1回の対戦が終わると、画像のように青い字で「数譜」という文字がチャット履歴に表れます。これを押すと、通常の対戦の履歴とは別に、記号で書かれた対戦の記録が表示されます。また、自動でコピーされるので、どこかに貼り付けることもできます。

 

テクニック

素因数キャンセル

手札ゾーンの手札は自動的に並び替えられます。しかし、自由に手札を配置して考えたいこともあり、そのようなときは素因数ゾーンが使えます。素因数ゾーンに並べる手札はもちろん好きな順番にできますが、それだけでなく「キャンセル」を押すと一度に手札ゾーンに戻ります。素数ゾーンに出す予定の素数を置いておけば時間ギリギリまで考えることができます。



「KKJの返されなさ」を点数化する

こんにちは、さしみです。初手にKKJが来たけど3枚出しすると相手のカマトトが怖いということ、ありますよね。二刀流が組めれば良いのですが常に用意できるほどたくさん覚えるのは難しいです。今回は、そんなときのための「カマトトして手札が25枚になった相手にKKJを返される確率」を簡単に見積もる方法、「overKKJブロッカースケール」を提案します。ぜひ読んで対戦に役立ててみてください!

 

今すぐ使える結果だけ見たい方は目次から「点数表・確率表」に飛んでください。

 

 

背景

先手の戦術として、最初に持っている11〜12枚の手札から3枚出しをして、次にKKJを出し、残りの5〜6枚(または57を用いて2枚少ない枚数)で上がるというものがあります。これはオーソとも呼ばれる、素数大富豪の最も基本的な戦術の一つです。下の数譜では、先手の3TKさんが手札を3枚出し、KKJ、4枚出しの3手に分け、順に出すことで明快に勝利を挙げました。

第4期梅森戦 

3TK:(5XKJ92482T5)

マリン:(7QJKK436Q57)

3TK:D(6)625=5^4

マリン:D(J)743

3TK:KXJ|X=K

マリン:%

3TK:2T89#

 

これに対して後手は、最初の3枚出しにわざと間違えた合成数出し(カマトト)をすることで、次のターンに25((11+1)*2+1)枚の手札を使えるようにする動きが有力です。これにより、後手にKKQまたはKKKのどちらかの合成数(以下overKKJ)が揃っていれば、先手のKKJに対してこれを出すことにより手札の量と質で有利に立つことができます。下の数譜では、マリンさんがカマトトでKKQを揃え、組み切りを阻止して長期戦を制しました。

第1期金剛戦 3TK-マリン 第9セット

3TK:(6X56583K98J)

マリン:(3JQ7984T249)

3TK:853

マリン:D(A)TQJ=432A^47899,P(4K7A66TK2735)

3TK:KXJ|X=K

マリン:D(2)KKQ=2^4*29*283

3TK:D(X)%

マリン:D(K)647

3TK:D(Q)659=X6*8Q|X=A,P(5A943TT)

マリン:7643

3TK:D(8)8QTX|X=J

マリン:D(Q)9KTJ

3TK:D(J)%

マリン:D(A)57[GC]

マリン:AQTAA#

 

先手の立場では、もし相手にカマトトされたときに、KKJに対してどれだけの確率でoverKKJを返されるか知るモチベーションがあります。もしKKJを用いた戦術の成功率が低いと推測されれば、他の戦術、9枚出しや全出しなどを選択した方が勝率が高くなるためです。

 

先行研究

overKKJが揃う確率に関しては「KKJを切り札にできれば二刀流を組むまでもなく勝ち切れる可能性が高い」(マリン, 2020)「4回に1回くらい[KKQ=2^4*29*283]で返される事もあります」(3TK, 2024)などの言及があり、研究前の私の主観では3割という意見が最もよく聞かれていました。しかし、その確率に関する定量的な研究は2025年現在では進んでいません。

 

なお、ここで簡単にnishimuraさんの「素数大富豪シミュレーション」で相手の手札を考慮しない25枚にoverKKJが揃う確率を計算すると、40~41%であることが分かります。ただし、KKJを持っているプレイヤーから見た相手側という、今回問題にする条件とは異なる部分があることに注意が必要です。

 

overKKJのうち揃いやすい方であるKKQは2を3枚使うことから、一般の局面でKKJを返されないためには2が相手の手札に十分にないことを確認する手法が有効であることは知られています。また、初手からの組み切りにおいても、KKJを持っている側の手札に2があればoverKKJを返されにくいことは十分推察できます。ただし、具体的な確率の差については明らかになっていません。

primedaifugo.fandom.com

 

目的

この研究は、初手で3枚出しをして次にKKJを出そうとしているプレイヤー(先手)から見た、合成数カマトトした相手(後手)にoverKKJが揃う確率を、明らかにしようとするものです。そのために、先手の手札の内訳と、後手にoverKKJが揃う確率の関係を定量的に評価します。さらに、その確率を推定するための、実戦で計算可能な指標を提案することで、プレイヤーの戦術選択の助けとします。

 

方法

先手の手札に含まれる重要な札(キー札)の組み合わせを多数用意し、それぞれについて後手の25枚の手札でoverKKJが揃う確率をシミュレーションしました。このとき、pythonでプログラムを書き、二分割した手札の全ての組み合わせについてシミュレーションを行うことで、分析可能なデータを増やしました。その結果を表にすることでそれぞれの数札の価値を推測、指標化しました。最終的には確率順に手札を並べて比較することで指標の微調整を行いました。

 

先手の手札に含まれるキー札としては、2,3,4,8,9,K,Xを選定しました。このうち、2,K,Xは経験から特に重要であると考えており、その他にはKKQに使われる数札がブロッカー(相手のある役を阻害する札)としての価値を持つと考えました。2の枚数、3の枚数、4,8,9いずれかの枚数、KとXの枚数、手札の枚数について全ての組み合わせを行うことを目標としました。

 

多数の手札を手動で「素数大富豪シミュレーション」に打ち込むのは困難だったため、pythonでシミュレーションプログラムを書きました。さらに、数札部分(例:23334589)と絵札・手札枚数調整部分(3枚または4枚、例:KXJJ)を列挙すればその全ての組み合わせについてまとめてシミュレーションを行えるようにしました。結果も上の分け方を用い二次元のスプレッドシートにまとめました。

 

シミュレーションは「素数大富豪シミュレーション」と同じモンテカルロ法を用い、それぞれの手札で10万回の試行を行いました。実行時間は80組ごとに約150秒でした。

 

画像のような表を目視してそれぞれのキー札の価値を推定しました。返される確率が近い手札について、それぞれが独自に持っているキー札の価値が近いとするような判断基準が助けになりました。なお、シミュレーション段階ではKKKとKKXは区別していましたが、理論、計算ともに同じ結果が出ることが分かったため統一しました。

シミュレーション結果を整理したもの

 

それぞれのキー札の価値を見積もり、大まかな指標を作った後に、確率順に並べた手札についてその指標における点数を計算して、周囲と比べて高すぎるもの、低すぎるものの原因を考察しました。さらに、点数と確率を対応させ、確率を大まかに推定できるようにするという当初の目標に合う指標を作りました。

 

点数表・確率表

完成した点数表と確率表がこちらです。手札を見て点数表から点数を計算し、確率表と対応させることで実際にKKJが返される確率が分かります。

点数表・確率表

 

2,3は持っている枚数に比例して点数が増えます。4,8,9はそれぞれ2枚持っていれば1点、3枚持っていれば2点を追加します。Kは2枚のKのうち片方がXのときに1点、KとXが合計で3枚あれば先の1点は無視して5点を追加します。最後に、ドローして手札が12枚になっているときは1点引いてください。

 

確率は最も近いものを参照してください。詳細な確率は、10点以下は1点につき3.3%、10~14点は1点につき2.5%として計算してください。14点を超えるときは計算が難しく実用性が低いと考えたため表には載せていませんが、16点で5%、20点で2.5%程度になります。

 

結果・考察

先手の手札のキー札を参照した、簡単な計算で導かれるKKJの返されにくさの指標を作ることができました。現在の指標の誤差(指標で求められる確率とシミュレーション結果の差)は、シミュレーションを行った手札の組み合わせにおいては上下6%に収まっています。

 

実例としては、3TKさんのこの記事で取り上げられている私のKKJ出しを挙げます。これは初期手札が233447899KKXで、この指標では14点、返される確率10%と計算されます。そして、シミュレーション上でも10.8%程度であるため、正確な予測ができていることが分かります。ちなみにゲーム自体はなんと返された上で勝ちました。

hana3101382283.hatenablog.com

 

この指標により、2,3,4,8,9,K,Xの相対的な価値も点数の比で表すことができています。3の価値が4,8,9の価値を大幅に上回っていますが、これはKKKが後手に揃う可能性が無視できないほど大きいことを示していると考えました。

 

ただし、この指標には限界もあります。最大の問題はあるキー札の価値が他のキー札の枚数によって変動する、交互作用を考慮できていないことです。特に、2が0枚のときに、4,8,9の同種3枚の価値が現在の指標より高くなり、3の価値が現在の指標より低くなる効果が大きいです。これを考慮して調整すればより正確な指標が作れると考えられます。

 

また、シミュレーションには入れなかったキー札としてKKQに使われるQも4,8,9とほぼ同じ価値を持つと考えられます。KKKが後手に揃う確率を考えると、7もキー札として考えることができます。

 

おわりに

KKJが返される確率の指標、いかがだったでしょうか。元々「2が強い」程度しか判断基準を持っていなかったこともあり、個人的には今の簡単なものでも大幅な改善を感じて満足しています。あまりにも返されやすいKKJのある手札では全出しを検討することも増えたほか、二刀流を覚えるモチベーションも上がりました。皆さんもぜひこの指標を取り入れて、必要なら改善してみてください。最後までお読みいただきありがとうございました!

第5期梅森戦決勝戦では何が起こっていたのか

こんにちは、さしみです。先日、第5期梅森戦の決勝でもりしーさんと対戦した際、強い手札を持ちながらラリーを切ろうとしてKKJQを通される場面がありました。観戦者からは仕方ないという感想も多かった一方で、個人的には非常に考察のしがいがあると思っています。

 

そこで、この記事では、そのセットの流れと、対戦中の思考を解説します。さらに、そこでの判断が適切なものであったか考察し、得られた2つの教訓、素数大富豪の戦術に関するものと対人戦の思考方法に関するものを紹介していきます。

 

 

第5期梅森戦概要

第5期梅森戦では、予選をAランクで通過し、くじ引きにより決勝トーナメントはベスト4の位置からのスタートとなりました。準決勝では3TKさんを3-1で破り、決勝に進出しました。その試合は3TKさんの自戦記が書かれているので、良ければそちらもご覧ください。

hana3101382283.hatenablog.com

 

決勝は第1セットを相手のHNPで落とし、続く第2セットが今回の主題となります。結果としては、このセットは負けに終わりました。続く第3セットは相手のやや甘い全出しをKKで咎めて流れを変えたものの、第4セットは初手から確定の組み切りをされ、1-3で敗北となりました。4連続で後手を引いたのが悲しいです。決勝のもりしーさんらしい運と言えばそうかもしれません。

 

ちなみに、決勝の方は、素数大富豪では珍しいshorts動画がもりしーさんの方から出されています。非常にテンポが良く、初心者でも雰囲気が伝わるようになっていると思います。

www.youtube.com

 

しかし、完全な運負けかと言うとやはり第2セットに挽回の余地がありました。一般的には、上級者同士の3セット先取では、立ち回りや知識によってはセット単位の勝敗を変えられていた場面が0〜2個あることが多いように思います。次の節では、問題の第2セットを解説していきます。

 

決勝第2セットの流れ

数譜

もりしー:(84T58Q2J7Q9)

さしみ:(6JT5528AX6Q)

もりしー:D(5)QQ57588T249,P(32AA463TJKK)

さしみ:D(3)T5J5A36Q682X|X=7,P(J7KQ68T794K4)

もりしー:D(7)8QTJ

さしみ:D(X)KJQJ

もりしー:D(9)KKJQ=2^3*A64A389

さしみ:D(9)KXQT=2*3*5*A67*889|X=K,P(32A23A64A389)

もりしー:57[GC]

もりしー:57[GC]

もりしー:24T9#

 

最初の2手はお互いに全出しです。余談ですが、こちらには6T5815=5×Q2J63という5ばいめーかーの初手上がりがありました。ただし、これを1分以内に出せる人類はいないと思います。にばいめーかーが成立しそうでしない、5ばいもドローせずにできそうでできないのが厳しく、実戦的にはタイムロスが許容できません。

 

その後は相手が8QTJを出し、こちらがKJQJで手番を取ろうとしたところ、KKJQを出されてこちらは返せませんでした。そして、相手はグロタンカットで手札を減らして上がりとなりました。よく見るとKKJQを出す前にドローしているため、最初から組み切れていたわけではなく、上がりをドローに頼っていたようです。

 

さて、このままだとただKKJQを切り札にされて負けたようですが、実はそうではありません。KJQJを出さずにカマトトしていればKKJQよりも大きい素数は揃えられたことから、少なくとも他に打つ手があったのは間違いありません。そして、KJQJは必ずしも悪手とは言い切れないものの、それを出すまでの思考プロセスに問題がありました。

 

試合中の思考

それでは、私が試合中何を考えていたか、細かく書き出すことで、その後の考察の

助けとしましょう。

 

まず、私がXを引いた時点で相手が出せるオバケはKKJQ以下であることが確定しました。相手のKが2枚以下で、さらにKKQTはこちらが6を3枚持っているため出せないというカウンティングができるためです。対して、こちらもKKJQは出せるものの、それより大きなオバケには1枚足りない状況でした。ただし、山札が5枚残っているため、回収すればKKQT以上のオバケのいずれかは揃う見込みがありました*1

 

そして、相手が出してきた8QTJに素数で返すためにはKが必須です*2。そのため、素数を返すと強いオバケが出せなくなります。よって、こちらが取るべき主な行動は、Kを使って素数を出すか、カマトトして(手番を渡しつつ)山札を取り切るかの二択に絞られました。これが今後の判断の前提となります。

 

この状況で、試合中の私の目には、KJQJで切って残りで組み切るという動きが非常に有力に思われました。具体的には、KJQJで親を取った後に絵札の枚数差を活かして超多枚を出し、残りで上がり切るといったプランになります*3。この「親が取れれば勝ち」という思考には一定の説得力があり、これに従って負けたなら仕方ないという感想もあります。

 

もちろん、KJQJで親が取れなかった場合のリスクも考えました。しかし、KJQJに返すにはオバケを出す必要があり、多くのカードを消費します。そのため、仮に返されたとしても何らかの形で相手のプランを崩すことができていれば、手札のバランスはこちらに傾くと考えていました*4。即座に上がられさえしなければ、次のターンからは圧倒的に有利に戦えるはずです。しかし、この「即座に上がられなければ」という仮定が、後の反省点になります。

 

さらに、私は相手が「4枚出し→オバケ→残り」という組み切りを用意している可能性が低いと考えていました。なぜなら、8QTJという手は、余った札が使われがちな最初の4枚出しとして用意することは難しい一方で、相手にカマトトを誘発するデコイとしては極めて優秀だからです。

 

これらの思考をまとめると、私は「手番を渡してKKや超多枚から上がられる」リスクを取りつつKKJQ以上のオバケを揃えるカマトトよりも、返される可能性があっても「パスされれば勝ち」という確実なリターンのあるKJQJ出しを強いと判断したことになります。この分かりやすいメリットを取ったKJQJ出しが、結果としては相手のKKJQからの上がりを許す形となってしまいました。一方で、カマトトしていれば十分な勝算があったようです。一見すると強い切り札に返されただけのようですが、実は、原因としていくつかの見落としや評価の誤りがありました。この後、試合後の考察としてそれぞれの論点を改めて検討し、試合から得られた教訓を明らかにしていきます。

 

試合後の考察

それでは、先ほどの試合中の思考を、結果を踏まえて改めて考察すると、どのように評価できるでしょうか。これらの判断材料のうち重要だったものを取り上げ、反省点を3つ挙げることにします。

 

第一に、カマトトすることで手番を渡すリスクを過大評価していました。試合中、こちらがカマトトした場合に相手がKKや超多枚出しを用いて上がってくる可能性がそれなりにあると感じていました。しかし、改めて手札を検討すると、そのリスクは限定的でした。仮に相手が超多枚出しをしてきても、こちらには多くの数札と2枚のXがあり、十分に対応できます。KKに関してはより厄介ですが、相手の残り枚数を考えると即座に負けることは考えづらいです*5。つまり、この盤面では、カマトトの危険性は試合中の想定よりも低かったと言えるでしょう。

 

第二に、相手の「8QTJ→オバケ→残り」という勝ち筋の可能性を、過小評価していました。残り7枚程度の手札から一手で上がるのは難しいこと、8QTJがデコイのようにも見えることから、試合中の私はこのプランの可能性を低く見積もっていました。しかし、この判断にはグロタンカットの見落としがありました。KKJQは5と7を使わずに出せるため、相手が2回57を出せるケースを考えると残り手札は実質3枚となり、十分に警戒が必要です。8QTJについては結局デコイと本命どちらの可能性もあるとしか言えないものの、このような局面で強く作用するという発見に繋がります。

 

そして第三に、私は「親が取れれば勝ち」という思考に固執しすぎていました。この勝ち筋を必要以上に重視した結果、相手がどうしたいか、相手が用意しうるプランは何かという、相手の視点が欠けていました。安直に強い素数を出せば相手の動きが止まるという一方的な思考に基づいたプランは、相手の勝ち筋への対応ができなかったときに崩壊します。このような、自分のプランへの固執が、試合の大きな敗因になっており、次の教訓とも強い繋がりがあります。

 

次の節では、以上の反省に基づいて、得られた2つの教訓を述べます。不確定状況のオバケは強力な戦術であることと、相手の狙いを考えた戦術を取るべきということです。

 

教訓1: 不確定状況のオバケ

今回の考察から得られる一つ目の教訓は、山札が残っている不確定な状況下でのオバケを使った組み切りが戦術として強いということです。

 

この戦術は、4枚出しのオバケに要求される札の数と種類が多いことで成立しています。同様のラリーを行う6~7枚出しでは、Kのみが切り札に支配的な役割を持つため、相手が山札の残り全部を持っていることを前提とした立ち回りが有力になります。しかし、4枚出しでは、残りわずかな山札の中にも重要な札が入っていることがあり、通常では切り札にならないオバケが、不意を突いて通ることがありえるのです。

 

また、この戦術の強みは、こちらからラリーを始めることで、相手の組み切りに制限を賭けられることにあります。この強みは、たとえ相手がより強いオバケを揃えていたとしても、出せる数を限定する形で発揮されます。最初に8QTJを出すのは極端な場合ですが、相手が組み切る前にこちらが大きな素数を場に出していると、手を崩して応戦するかパスやカマトトをするかの決断を迫ることができます。

 

途中で相手がカマトトしてきた場合には、相手に大きなオバケを揃えられることもあります。しかし、こちらの手札は通常より減っており、オバケ上がりを狙えることがあります。相手より大きなオバケを持っていてもオバケ上がりを防いで勝ち切るのは難しいため、不利な手札からの逆転の手段としては最適です。

 

この不確定状況のオバケは、特に自分が切り札の強さで負けている場合に真価を発揮します。KとXをより多く持っている側には、有利な状況から負けるわけにはいかないという心理的なプレッシャーがかかります。単に逆転の手段として有効なだけでなく、複雑な状況で相手のミスを誘い、通常ならば勝ちづらい手で勝てるという点もこの戦術の強みです。

 

教訓2: 相手の狙いを考える

そして、二つ目の教訓は、こちらの強い動きが通れば勝ちという思考に固執せず、相手の狙いを多角的に考えることの重要性です。これは、戦術以前の、対人ゲームの思考法自体に関わるものです。

 

試合中は、とりあえず手番が来れば勝ちという思考に釣られて、相手の動きによって裏目になる場合を考えられていませんでした。この罠を回避するための方法の一つとして、試合中の短い時間であっても「相手の視点を念頭に」思考を整理することが有効なのではないかと考えました。

 

ここでは、

1.相手の狙いをリストアップする

2.自分の取りうる選択を挙げる

3.それぞれの選択肢を雑に評価する

という手順を取ることにしましょう。

 

まずは、相手の狙いとして、ありうる勝ち筋を列挙します。このとき、相手の持っている可能性のある手札をある程度正確に把握する必要があり、それにはカウンティングの技術が求められます。今回の試合では、このようになります。

 

・KKJQ以下のオバケ*6

・KK(8QTJはデコイ)

・超多枚(8QTJはデコイ)

・その他、ノープラン

 

こうして整理すると、自分の選択肢として実戦のKJQJ出しとカマトトの他に、KKJQを残したKTQJ出しも挙げられることが分かります。ただし、実戦の状況と当時の私の超多枚の知識ではKTQJからは組み切れなかったことを考慮し、議論を簡単にするために選択肢から外します。

 

その上で、それぞれの選択肢がもたらす勝率をごく簡単に評価したものが以下の表になります。

 

戦術

出現率

KJQJ

カマトト

オバケ

30%

20%

80%

KK

30%

100%

60%

超多枚

20%

100%

90%

その他

20%

100%

90%

総合

100%

76%

78%

 

この表を見るとカマトトがやや優勢に見えます。ただし、この結果はオバケを出される確率の見積もりによって大きく変化します。実戦ではオバケを出される確率を50%程度まで高く見積もれるようにも思えますし、逆に相手によってはこの場面でほとんどオバケを出されないケースも存在します。しかし、試合で本当に問題だったのは、この予測で期待値の低いKJQJ出しを選んだことではありません。

 

最大の過ちは、こうした、相手の視点を考慮した多角的な検討そのものを、安直な判断によって放棄してしまったことにあります。相手の取りうる選択にしたがって勝率を検討するというプロセスを省略し、ただ「親が取れれば勝ち」という分かりやすい勝ち筋に飛びついたことが、今回の敗因であると考えます。*7

 

結論としては、相手の手札を把握したうえで狙いを想定し、その全てを総合した上で有利に対応できる手を選ぶという、地道だが理性的な思考が対人戦には求められるわけです。決して、特定の場合に強い、勝ち負けが簡単に決まるといった特徴のある分かりやすい選択肢で「楽をする」ことは勝ちに繋がらないのだと痛感しました。

 

まとめ

今回は梅森戦の決勝で負けた試合を取り上げ、さらにある一局面に注目して自分の選択を振り返りました。素数を返すかカマトトするか悩ましい中で、深く検討すると後者が優勢なもののどちらにも理はありそうでした。その中で、一番の問題は、目先の分かりやすさに飛びついた選択をしてしまったことだと気付くことができました。加えて、実際は負けているオバケで組み切り初手に大きな素数を出すという相手の動き自体が、偶然もありながら強く、悩ませられるものであったという発見もありました。

 

第5期梅森戦で優勝したもりしーさん、改めておめでとうございます! 負けてしまったのは悔しいですが、5年ぶりのタイトルという歴史的な瞬間を間近(オンラインですが)で見られたことには嬉しさもあります。2017年から様々な変化を経験しながら、変わらず大会に出続けているレジェンドに敬意を表してこの記事を締めたいと思います。

*1:注:1,2,3,7,9,Kのどれかを1枚でも引けばKKQT,KKQK,KKKT,KKKQのどれかが揃う。

*2:注:Kを使わない素数で最大のものはQQQJだが、出せないことが多い。

*3:注:KJQJ→98876654432QKXTTX(X=Q,J)→7561とすれば手札を組み切れた。

*4:注:今回の場合、こちらがKJQJを出しても絵札がTTQKXXと残るのに対し、オバケを出した相手の絵札は4枚以下となる。

*5:注:8QTJにカマトトした後相手がQ8=2^6×2を出してきた場合、KK・グロタンカットを除いた手札が5枚になるため、圧力に負けてこちらからKKを出すことになりそうです。しかし、それでもこれからの勝負になります。

*6:注:KKQT以上のオバケやKJQJ→回収などの戦術も一般にはありえますが、相手の手札を考えると今回は存在しません。このような部分も含め、相手の立場に立つ必要があります。

*7:注:親が取れれば勝ちという分かりやすさは、上の表の「100%」の魅力に表れています。しかし、実際に相手の行動確率を見積もってみると、その価値は高いとは限りません。また、分かりやすさのために省略しましたが、実際に勝率が100%となるのはKJQJに相手がパスした場合に限られ、本来は即興でオバケを返される可能性が残っています。

中級者を目指すためのオバケ攻略

こんにちは、さしみです。最近「要約版・オバケ攻略」と「競技素数大富豪の中級者になるには」という2つの記事を書きました。そこで書いた通り、競技素数大富豪の大会では、全出し後の戦術を一つ身につけることで格段に楽しみやすくなります。また、その戦術は、オバケが最も適しているように思われます。

 

そこで、今回は、初級者がオバケを身につけ、中級者を目指すことに焦点を当てた記事を書きました。これを読んだ人が実際にオバケを身につけ、素数大富豪をより楽しめるようになることを目的としています。また、長期的には、このような記事をきっかけに、初級者向けの攻略記事が増えることを願っています。

 

 

この記事の内容

第1章ではオバケとは何か簡単に説明します。さらに、オバケがなぜ、初級者のとっての最初の戦術としておすすめできるのか解説します。一つには必要な知識の少なさ、もう一つには組み切りの容易さを取り上げます。

 

第2章ではオバケの、ラリーを用いた基本的な組み切りの方法を解説します。最初に覚えるべきオバケとしてKKKQとKKJQの2つを取り上げ、それぞれの効果的な使い方を、実戦例に触れつつ明らかにします。さらに、ラリーを妨害する方法とその対策についても述べます。

 

第3章では知識を身につけるための道しるべとして、覚えるべきオバケの優先順位を示し、素数についても初級者向けの知識セットの一例を取り上げます。迷いやすい学習方法についても、実戦の他にできることを具体的なツールを示して解説します。

 

第4章ではまとめとして、この記事で身につけられるものを改めて示します。この記事の内容を活用しながらオバケを得意戦術とするにはどうすればよいか、初級者からマニアに至るまでの全体像を解説し、読者が立ち位置を明確にできるようにします。

 

用語集

組み切り:ある手札を持っているときの、上がるまでの計画、またその中で出す素数のこと。多くの場合、手札をいくつかの素数合成数に完全に分け、順番に出すことを想定する。必ずしも理論上勝ちが確定していなくても良いが、上がる直前に出す切り札には強さが求められる。

 

切り札:その場面で返されない数、または相手が山札の残り全てを持っていても絶対に返されない数のこと。強いが理論上返されうる数を指すこともあり、使い分けは曖昧。「KJQJは11枚同士では切り札となるが、相手の手札が24枚のときは切り札にならないことが多い」など。

 

ラリー:切り札の前に、ある枚数出しを複数回行う組み切りのこと。その性質上、2回目以降の数が妨害されて出せないことがあり、その点でオーソと異なる。手札11枚からは2~3枚出し、手札24枚からは3~7枚出し(3~4枚出しはオバケ込み)で行われることが多い。

 

オーソ:切り札の前に、ある枚数出しを1回だけ行う組み切りのこと。「オーソドックス」から。手札11枚からは3~5枚出し、手札24枚からは9~10枚出しで行われることが多い。ただし、それ以外の枚数でも主に合成数を使うことでオーソと同様の組み切りを実現することができる場合がある。

 

KKX:切り札の強さに大きく関わる、4枚のK、2枚のX(ジョーカー)の6枚のうち、自分の手札にあるものを表す書き方。KKXのとき、山札の残りを全て相手が持っているとすると、相手もKKXのため切り札の強さが互角、あるいはその他の札次第になる。KKKXでは相手がKXしか持てないため有利、KXであれば逆に不利になりやすい。

 

カマトト:わざと間違えた着手をしてペナルティで手札を増やすこと。単にカマトトと言う場合は合成数カマトトを指すことが多い。合成数出しを間違えることで場の枚数よりも多く、最大で手札の枚数と同じだけのペナルティを得られる。山札を全て引かれる場合もあり、組み切りの際には対策が求められる。

 

1 概要

1.1 オバケとは

KJQJは4枚出しにおける最大の素数です。しかし、合成数出しを用いるとより大きな数を出すことができ、それらはoverKJQJ、あるいはオバケと呼ばれます。それぞれのオバケは合成数部分で、例えばKKKQ=2^4*3*273569であればKKKQと呼ばれることが多いです。有名な解説があるので見たことのない方は読んでみてください。

hana3101382283.hatenablog.com

 

なお、合成数出しの理解に不安のある方は、ルール解説や以下のページを参照してください。

primedaifugo.fandom.com

 

3枚出しのoverKKJや5枚出しのoverKKQKJも広義のオバケに含まれることがありますが、ここでは4枚出しのoverKJQJのみをオバケと呼びます。また、overKJQJを使った戦術、つまり手札を活用して上がるための方法論まで含めてオバケと表現することもあります。

 

元々は、オバケは4枚出しで強い切り札とみなされていたKJQJに対抗するために研究されていたようです。しかし、現在は、それよりも単に切り札としての使い道が主流になっています。さらには、上級者同士の対戦では、手札の構成から理論上返されないオバケ以外は返されるようになっています。

 

1.2 なぜオバケなのか

全出しによって増えた手札の組み切り方を全く知らない初級者にとって、切り札を用いた戦術を一つ習得することには大きな意義があります。特に手札が強いときに、理論上返されない素数合成数を活用することが重要です。相手の知識に関係なく勝てるプレイングは、対上級者の勝率に大きく貢献するためです。

 

そのような戦術として、6枚出しラリーや7枚出し合成数など手札が強いときの組み切りが簡単なものはいくつかあります。しかし、それらと比べてもオバケにはいくつかの優位性があります。まずは、初手の二刀流などあらゆる場面で使う4枚出しをそのまま役立てられることです。これにより、覚える必要のある素数を減らすことができます。

 

次に、枚数が少ないことで、手札が24枚以外のとき、相手が中級者以下のとき、長期戦などの汎用性が高くなります。詳しくは次の章で解説しますが、4枚出しを繰り返すことで切り札を維持したまま安定して手札を減らすことができます。また、最後に出す素数を必ず4枚以下にできることも、必要な知識を少なくしています。

 

2 オバケの使い方

2.1 ラリー

オバケを用いたラリーとは、小さい順に4枚出しを繰り返し、最後に絶対に親が取れるオバケを出し、残りで上がる戦術です。「自分が出して相手が返す」ことがテニスなどのラリーに似ていることから名付けられており、オバケを使わない6枚出しなどでも同様の戦術が存在します。

 

そのような流れを計画する、つまり組み切るためには、まず手札からオバケを探します。見つかったら、それを構成する札を取り出し、残りをいくつかの4枚出しと1つまでの別の枚数出しに分ければ良いです。8QTJなどのできるだけ強い素数から探し、絵札を使い切ったら4枚4桁を探すのが最も簡単です。

 

オバケは多くの場合で、合成数と素因数を合わせて12〜14枚の手札を消費します。これを踏まえて一般的な全出し後、24〜25枚の手札を処理することを考えると、オバケ以外に使える札は10~13枚となり、4枚出しを2回するのが最も一般的ということが分かります。手札が増えた場合はそれ以上の回数で組み切ることもできます。

 

グロタンカットを効果的に使ったり、高度な内容になりますが7枚出し程度を最後に用意したりすることで、オバケの前に出す4枚出しを1回にすることもできます。このような組み切りは一般のラリーと異なり妨害を受けないため、特に強力です。オーソ風と呼ぶこともあります。

 

2.2 KKKQ

それぞれのオバケには独特の強みと弱み、使うときのコツがあります。初級者が覚えるべきオバケについては次の章で詳しく解説しますが、必須と言えるのはKKKQとKKJQだけです。そのため、ここからはこの2つのオバケについて実例を交えつつ使い方を解説することにします。

 

KKKQ=2^4*3*273569はオバケの中で2番目に大きいです。KKKKはほとんど出されないため、実質的には1番大きいと言えます。実際、KKKQを持っている場合は同じKKKQを先に出される以外の心配はなく、常に切り札として機能します。その強さと、25枚の手札に20.9%という決して低くない揃いやすさから、大会でも最も多く出されています。

 

KKKQは絶対に返されないことを活かし、いつでも切り札を用いた基本的な組み切りに活用できます。揃っていることを判断するには、Kが3枚、2と3がそれぞれ2枚あることを確認してから、その他の札に目を向けるのが分かりやすいです。KKKXと持っている場合にはジョーカーを温存し、組み切りを簡単にするのに使うこともできます。

 

PQCS2024夏 1次予選 Bブロックより

天 和子:(9QA7627J73X)

凪:(K9545253J47)

天 和子:A2367779JQX|X=3,P(39T2Q5QJTXA)

凪:D(6)J4K423555679,P(3KJ6KA884Q28)

天 和子:%%

凪:D(6)585A

天 和子:D(8)T69A

凪:648J

天 和子:XJQJ|X=K

凪:KKKQ=2^4*3*273569

天 和子:%

凪:648J#

 

このセット(1回の対戦)は凪さんがオバケの組み切りで勝利しました。4手目にドローした時点で、KKKQを除いた手札が1445566888JJとなっており、それを5851,648J,648Jの3つに分けた形になります。実は奇数が少なく、その制約の中で上手く分けています。そのうちの2つをオバケの前、1つをオバケの後に出すことで組み切りが成立しました。

 

なお、5手目でT691の代わりに648Jよりも大きな素数が出ていたら、以上のプランですぐに勝つことはできません。このように、ラリーは常には成功しませんが、妨害されてもKKKQが残るのが重要で、これからの勝負になります。詳しくは後のラリー切りの節で解説します。

 

2.3 KKJQ

KKJQ=2^3*1641389はオバケの中で10番目に大きく、KとXを2枚しか使わずに出せる中ではKKQTの次に大きいです。そして、揃いやすさという観点では全てのオバケの中でも3番目で、25枚の手札では49.4%にもなります。切り札になる場面は限られますが、その圧倒的な汎用性から大会でもKKKQに次いで多く出されています。

 

まず、KKJQはその揃いやすさから、切り札が用意できない場合でも、切り札に近い存在として様々な活用法があります。たとえば、こちらがKKJQを持っている限り、相手が確実に勝つためにはKKQTなどの大きなオバケを用意しておく必要があります。返せるオバケが少ないことを利用して、相手の動きを制限することで逆転が狙えます。

 

初級者にとっては、むしろ切り札としての活用が重要です。こちらがKKKXと持っている有利な状況(注:KKXの場合でも通せる場合がありますが、難しいので省略します)では、相手にはKXの2枚しかありません。すると、相手の出せるオバケは大きい順にKKQT,KKJQ,…となります。つまり、KKQTを出されなければ、こちらのKKJQは確実に通ることになります。

 

KKQTを出されないことを確認する方法はいくつかありますが、特に2の枚数が重要です。KKQT=2*3*5*167*2621は2を3枚使うため、こちらが2を2枚以上持っていれば出されることはありません。また、2が余っていればKKJQ=1641389*2*2*2と出せる場合があるのも覚えておきましょう。

 

また、KKKXがあるときには、余ったKとXが非常に大きな助けになります。KはKKJQ=2^3*164K89と素因数に使えるほか、ラリーで出す素数を8QTKなどと大きくするのに使えます。XはもちろんKとして使っても良いですし、数札の代わりにすれば組み切りが格段に楽になります。

 

金剛戦 第6試合 第15セットより

さしみ:(K8K5AA7A943)

3TK:(J5TK325T964)

さしみ:D(J)AAA345789JKK,P(58Q6XX46728Q)

3TK:D(7)5T5T9J4K6723,P(29ATKJQQ7394)

さしみ:D(2)57[GC]

さしみ:84QA

3TK:D(6)KTQJ

さしみ:KKJQ=A64A389*2*2*X|X=2

3TK:D(8)%

さしみ:X6857|X=9#

 

このセットはさしみが有利な手札を持ち、一切の妥協をせずに組み切りました。3手目のドロー後の時点でKKXXと持っているほか、2が2枚あるためKKJQが必ず通ると判断できました。さらに57を2組持っていて、Xまで余らせることができたため、素数を選ぶのにはかなりの余裕がありました。

 

2.4 ラリー切り

ラリーはいつでも成立するわけではありません。オバケの前に素数を2回出す場合、大きな素数を返されると2回目の素数が出せない場合があります。逆に、相手がオバケを使ってきそうだと思ったときには、大きな素数を出せばラリーを妨害できる場合があります。ここでは、ラリーを切る方法とその対策を紹介します。

 

ラリーで組み切ろうとするプレイヤーは、4枚出しの素数を小さい順に出し、最後にオバケを出すのでした。ということは、2回目、3回目の4枚出しをできなくすることで、相手にプランの変更を強いることができます。そのためには、返す素数が相手の出そうとしている素数より大きいことが必要になります。

 

オバケを出す側は持っているKをオバケに使うため、ラリーで出す素数にはKを使わないことが多いです。Kを使わない4枚出し素数は大きい順にQQQJ,8QTJ,8JTJ,...と続きます。QQQJはややオバケの残りとしては揃いづらく、逆に8QTJは揃いやすいことから、ラリーの最後、オバケの直前に出す素数は8QTJ以下になることが多く、8QTJの場合もそれなりにあります。

 

そのため、8QTJを出すことで、相手が同じ8QTJを出そうとしているときも含め、多くの場合でラリーを切ることができます。そのため、まずは8QTJから検討するのが安定しやすいです。相手が3回以上の素数出しを計画しているときなどにはより小さい素数でもラリーが切れることはあります。

 

もちろん、KJQJや9KTJなどの、より大きい素数でラリーを切ることもできます。ただし、Kを使うことで出した後の手札が弱くなりやすいことに注意が必要です。どのような大きさの素数でラリーを切る場合でも、残りの手札で革命や他の枚数出しをするなどの狙いを残すことが勝ちにつながります。

 

オバケを使う側の立場に戻ると、ラリーの成功率を上げるためには、ラリーの回数をできるだけ少なくし、また2回目以降の素数を大きくすることが重要です。特に、オバケの前の4枚出しを2回で済ませられ、後の素数が8QTJ以上のときが強いです。前述の通り相手も8QTJを狙ってくるため、Kが余れば9KTJなどを出せるとさらに強くなります。

 

もしラリーを途中で妨害された場合は、オバケを崩して大きな素数を出したり、いきなりオバケを出したりするのは得策ではありません。ここでは冷静にパスをすることで、相手が絵札を消費した状態で仕切り直すことができます。もし相手が全出しで山札を回収してくれば、ラリーを再開し次の素数を出せばよいです。

 

ただし、山札に期待できる場合はカマトトしても良いです。また、相手が上級者の場合など、パスしたときに組み切られてチャンスが回ってこないと思われる場合はオバケを出してしまうという手もあります。残りの手札は当然弱くなりますが、HNPでの一発逆転を狙いましょう。

 

PQCS2024冬 準決勝より

マリン:(T54JJA8A793)

さしみ:(JQKQ68T76K6)

マリン:D(J)57[GC]

マリン:938AA

さしみ:D(4)KKQTJ

マリン:D(4)%

さしみ:Q646687,P(528T58X)

マリン:D(4)T444JJJ,P(92936X2)

さしみ:D(Q)T24556667888QQX|X=A,P(79K2QA75AK3T357)

マリン:23444699T2JJJX|X=3,P(938AAKKQTJ)

さしみ:886A

マリン:4TTJ

さしみ:KKXQ=2^4*3*273569|X=K

マリン:D(2)%

さしみ:57[GC]

さしみ:57[GC]

さしみ:57[GC]

さしみ:TQQT86A#

 

このセットではさしみがラリーを妨害され、窮地に追い込まれたものの、HNPに活路を見出して勝利しました。9手目の時点でKKXと持っているものの、Jがないことで組み切りには大きな制限がありました。幸いKKKQがあったため、それを軸に組み切りを考えます。

 

しかし、オバケを除いた手札は1155566777888TTQQと非常に偏っており、仮に毎回小さい素数で返されたとしてもラリーが厳しい状態でした。苦し紛れの8861に大きな4TTJで返され、次の手は消滅しました。そのため、仕方なくKKKQを出し、グロタンカットを連発した後に7枚出しが素数であることに賭けました。

 

なお、11手目はパスでも教科書的には正しいです。ただし、この場合はJがなく5枚出し以上に切り替えられると勝つのが困難であること、相手がトッププレイヤーのマリンさんで、手番を渡すと組み切られる可能性が高いことなどから総合的に判断し、KKKQを選びました。ちなみに、この試合は解説を書いています。

greenplus.hatenablog.com

 

2.5  KJQJカウンター

現在の素数大富豪でも、KJQJに返すためにオバケが求められる場面は存在します。二刀流でないKJQJのオーソが最も分かりやすいです。他にも、全出しを相手に初手でKJQJを出すことや、長期戦の中でKJQJで手番を取ろうとすることがあります。多くの場合では正しく対応すれば有利な反面、オバケを知らないと一気に苦しくなりやすいです。

 

ここでは、相手が切り札としてKJQJを使ってきた場合を取り上げます。相手の手札は残り3~8枚で、パスすれば上がってしまいそうですが、手自体は弱そうです。一方、こちらの手札は全出し後の24枚程度のことが多いでしょうか。オバケを出した後にいかに組み切るための手札を残すかが腕の見せ所です。

 

まずは手札の中からオバケを探しましょう。それぞれのオバケで2枚以上使う数札を覚えておいて、揃いそうなものからチェックすると見つかりやすいです。絵札も、特にKが2枚以下のときは注意しましょう。覚えているオバケが少ないうちは、揃いやすいKKJQなどから1つずつ考えても良いです。

 

オバケが見つかったら、オンラインでもトランプでも出せるように並べておいて、残りでどう戦うか考えましょう。相手の手札より2枚以上多い素数は、絶対にパスをさせることができます。相手の手札全体より絵札の多い素数も同様です。この2つを上手く使って、手札を減らすと勝ちに近づきます。

 

なお、先に小さい素数を出して、相手が返してくることを期待するのは危険な場合があります。特に、上級者は手札が弱いときにはカマトトをしてくることが多いです。それで絵札を引かれて困らないように考えておきましょう。相手が即上がれなくなったと判断し、こちらも全出しで手札を増やすのは一つの手です。

 

PQCS2023冬 準々決勝より

マリン:(A2334579TQK)

もりしー:(667899TJQKX)

マリン:D(7)TQKA32345779 P(22456889TTKX)

もりしー:D(A)966A

マリン:D(J)8TT9

もりしー:KJQX|X=J

マリン:D(3)KJKQ=2*2^3*8A9457

もりしー:%

マリン:X765423|X=8

もりしー:%

マリン:T3#

 

このセットでは、全出しによって手札が24枚になったマリンさんに対し、もりしーさんがKJQJを用いた組み切りを試みました。しかし、KJKQというオバケで返した後に冷静に立ち回ったことで、マリンさんが勝利しました。

 

5手目のドロー後のマリンさんの手札は、オバケを除くと2334567TXとなっています。もりしーさんの手札は残り4枚のため、オバケを出したときのドロー、次に素数を出したときのドローを入れても6枚にしかならず、7枚出しをすれば確実にパスさせることができます。そこまで考えて、X765423(X=8)、T3の順に出したものと思われます。

 

なお、枚数の多い素数を知らなければ、4TX(X=J)→57→6323というような組み方も次善の策としては有効です。実際のもりしーさんの手札は789Tであったため、JやKを引かれると厳しいところですが。相手がXを使ったので3→T=2*5→X→3467とするような1枚出しは、発想は難しいですがやることは簡単かもしれません。おまけ程度に見てください。

 

3 学習法

3.1 覚えるべきオバケ

オバケは全部で38種類存在し、基本的には好きなものを覚えればよいです。しかし、素因数を含めて12~13枚ほどもある合成数を、全て覚えるのは困難です。ここでは、絶対的な切り札となりうるものと、揃いやすいものに分け、それぞれ優先順位の高い順にオバケを取り上げます。

 

切り札として使えるものの中では、KKKQとKKJQを既に紹介しました。この2つはあらゆるオバケの中で最も重要で、これだけで中級者になるためには十分なほどです。しかし、特にKKJQの理解に大きく関わるほか、それ自体切り札としてある程度使えるオバケがいくつか存在します。

 

重要な順にKKQT=2*3*5*167*2621,KKQK=3*379*J549,KKKT=2*5*17*77243があります。どれもKKJQが返されないか判断する上で重要な素数です。逆に言えば、これらを覚えておくことで無理なKKJQの組み切りを強行されても返り討ちにできます。加えて、この3つはKX4枚持っていれば必ず通るため、組み切りにも活用できます。

 

次に、単に揃いやすいオバケも、無理なKJQJにカウンターするためや、手札の減った相手に切り札として通すために、ある程度覚えておくと便利です。KJKQ=2^4*819457,KQJK=683*192Jの2つはオバケの中でも最も揃いやすく、KQQJ=3*587*7451,KQTJ=T1*163*797はKが1枚しかなくても出すことができます。なお、オバケの揃いやすさについては以下の記事が詳しいです。

qk-titech.hatenablog.com

 

まとめると、KKKQとKKJQが使いこなせればこの記事の内容は実践できます。上級者を目指してオバケを得意戦術とするのであれば、他のオバケも一つずつ覚えていくと良いでしょう。この記事に載っていないものを覚えるころには、強さと揃いやすさを重視して自分で基準を考えられるようになっていると思います。

 

3.2 覚えるべき素数

オバケによる組み切りは、4枚出しを繰り返した後にオバケを出し、残りの何枚かで上がるというものでした。大きく分けると、4枚出しと、4枚出し以外の素数がこれを実現するために必要になります。それぞれについて、使用する場面から逆算した重要度の高いものを紹介します。

 

まずは、オバケの前の4枚出しの知識が必要で、基本的にはこちらの方が重要です。ラリーをする場合、オバケの直前に絵札の大半を使い、4枚6桁〜7桁(特に後者)の素数を出すのが強くなります。逆に、序盤には数札を消費できるよう4枚4桁~5桁(特に前者)を使いこなす必要があります。

 

4枚4桁は最も重要で、オバケ以外の戦術でも切り札を出した残りの手札で上がるために使われます。並べ替えて同じになるものを一つとすると全部で246種類ありますが、中級者を目指すなら全ての桁が異なるもののうち、1を含まない38個から始めるのがおすすめです。1を含むものは3枚4桁として覚えましょう。覚える素数の一例を下に示します。

 

325X,346X,565X,148X,943X

8423/8429,8623/8629

9623/9629,4723/4729,7823/7829

8641/8647,6421/6427,8521/8527

5849/5869,9871/8761

 

4枚5桁、6桁はやや影が薄いですが、余った絵札を上手く消費するためにある程度は覚えておくと組み切りが楽になります。特に、TをQは切り札に使われないことが多いので、それらを含むものの優先度が高くなります。4枚6桁であればTT,QT,QQの組み合わせに注目しましょう。やはり一例として素数表を示します。

 

8T4X,5K4X

66T3/66T9,246J/468J

44Q3/44Q9,65Q3/65Q9

76Q3/76Q9,98Q3/98Q9

 

XQXJ(X=(1,)3,4,6,7,9)

TXT7(X=1,2,4,5,8)

2TT9/8TT9

9QT3/9TQ7/9TQ1,6QT9/6QT7/6TQ3

4QQ3/4QQ7,3QQ1/7QQ1

98TJ/94TJ,46TJ/68TJ

86TK/84TK,84QK/64QK

 

4枚7桁はラリーの成立に大きく関わります。切り札のために残しておきたいKを使わず、できるだけ大きな数札で始まる素数が特に重要です。ただし、8QTJより大きな4つについては出せるときには強いためKが入っていても覚えるべきです。オバケの組み切りという観点で重要な素数を示しておきます。

 

9KTJ,9QQK,8KJJ,8QTK

8QTJ/4QTJ/2QTJ,8JTJ/6JTJ/5JTJ

5QQJ/5TQJ

6TQK,4TTJ

QTT3/QQT3

 

なお、4枚8桁はKJQJ,KJTK,KTQJ,QQQJを覚えておけば困りません。KTQJとQQQJはまれにオバケと両立させてラリーで出せることがあります。

 

他の枚数も、知識が多いほど組み切りが簡単に、そして取れる行動が強くなる傾向があります。4枚出しを繰り返した余りが0~3枚であることから、3枚出しまでを覚えておけば最低限の組み切りはできます。しかし、1枚の代わりに5枚、2枚の代わりに6枚を出すことができれば、その分ラリーの回数を減らすことができます。

 

とはいえ、初級者にとって最も重要なのは3枚出しとなります。もし大半の組み合わせで3枚出しを知っていれば、残りが3枚になる組み切りでは残りの心配をせずに強い4枚出しを選んでいくことができます。逆に、知っている3枚出しが少ないと4枚出しを何度も組み直さなければならなくなるかもしれません。

 

中級者を目指すにあたっては、3枚出しの大半、具体的にはTやQを使うものを優先して100個以上を覚えることが望ましいです。しかし、初級者として11枚の手札を組み切る練習を積んでいれば、この条件は自然と満たされていることも多いでしょう。もし不安があれば、以下の記事を参考にしてください。

greenplus.hatenablog.com

 

 

5枚出し以上の素数も確実に助けになります。ラリーに使える手札の中から、枚数の多い素数を抜き出し、残りを4枚出しのみに分けるという組み方が強いです。たとえば、オバケ以外が13枚のときは、残りで出すのは1枚、5枚、9枚のいずれかになるため、5枚出しか9枚出しを見つけられればチャンスです。

 

このような素数としては、絵札を含まないものや、偶数の多いものが使いやすいです。そして、一般的な多枚出しの優先順位とも一致します。一例としては、5枚出しの86423や6枚出しの886243,88642-1/7/9などは覚える価値があるでしょう。現時点でこれという記事はありませんが、自分で探索してみると面白いです。

 

なお、手軽に探索したければ、nishimuraさんの「素数大富豪 手札探索」を使用することを強くおすすめします。試しにリンクを開き、「手札」に「2,2,4,4,5,5,6,6,8,8,1」と入れ、「素数探索枚数上限」を5にすると、1で終わる偶数消費素数が大量に出てきます。いろいろ変えて好みの素数を探してみましょう。

searial.web.fc2.com

 

素数の記憶全体に言えることとして、同じ組を並び替えてできる中では最大の素数、つまり上位互換を一つだけ覚えるのが強いです。ただし、特に絵札の少ない素数は出せること自体が重要です。四つ子素数や独自の語呂で数を稼げるのであれば、多少は代わりに小さい素数を覚えることがあっても問題ありません。間違ってもQJKJなどを覚えようとするのはやめましょう。

 

それから、基本的には札の重複が少ない素数が優先されます。これは使用頻度が高くなるためで、逆に99991のような素数は9が4枚必要なため汎用性が下がります。また、偶数が多い素数も覚える価値が高く、偶数が余ったときの方が組み切りが困難になりやすいからです。オバケで消費する札も、奇数が多く偶数を残しやすい傾向にあります。

 

3.3 組み切りの練習法

オバケによる組み切りを練習するには、実戦でオバケを出すのが最も定着しやすく、オバケに限らず経験にもなるでしょう。しかし、対戦相手が見つからない場合や、オバケだけに集中して取り組みたい場合もあるでしょう。そのようなときに使える方法をいくつか紹介します。

 

24枚同士の戦いを自分でシミュレーションしてみるにはnishimuraさんの「一人二役」が便利です。「24枚ずつへ」で2セットの手札が生成されるため、強いオバケがある側の立場で組み切りを考えてみると面白いでしょう。「生贄」で素因数場に手札を出しても「選び直す」で何度でもリセットできるので、これを使ってオバケや素数を取り分けるという小技があります。

searial.web.fc2.com

 

あるオバケを確実に含む手札が欲しいときは、トランプからオバケを抜いて持っておき、残りをシャッフルした上で手札が24枚になるまで引くという方法もあります。コンピュータ上で同じことをするには、nishimuraさんの「素数大富豪シミュレーション」を使うのも、少々慣れが要りますが有力です。

searial.web.fc2.com

 

3.4 コラム:知っているフリ

切り札となるオバケは主にKKJQに、その他のオバケは主にKJQJに返せる点が強いという紹介をしました。しかし、実際にそのようなKJQJやオバケにオバケで返す場面というのは多くありません。返されると分かっていてオバケを出すのは、手札を無駄に弱体化させることになるからです。

 

しかし、こちらがオバケをほとんど知らないことが周知の事実だったらどうでしょう。相手にとっては、返されるはずのオバケを切り札として使うチャンスになります。場合によっては、こちらが本来勝てるはずのゲームで、わずかな知識の不足が原因で負けることになるわけです。

 

そのような事態を防ぐためには、もちろん主要なオバケを全て覚えておくのがベストです。しかし、より簡単なのは、どのオバケも覚えている可能性があると思わせておくことです。たとえば「KKQT,KKQK,KKKTのうち1つを大会のために覚えてきた」と言うだけで、相手は無理にKKJQを出すことができなくなるでしょう。

 

4 まとめ

4.1 結論

4枚出しまでの比較的少ない知識で組み切れる場面が多いオバケは、初級者が学ぶ全出し後の勝ちパターンとして非常に適しています。その一方で、知識を増やせば増やすほど、着実に使いやすく、強くなるというポテンシャルもあります。この記事の内容を全てマスターできれば、あなたは中級者としても十分すぎるほどの、立派なオバケ使いになっているでしょう。

 

4.2 ステップアップの道筋

初級者の中で、全出しをしない方はまず全出しをプレイングに取り入れるようにしましょう。相手が強く、初手のラリーにはカマトトしてきそうなとき、初手に切り札がないとき、相手が全出ししてきたとき、どれも全出しのチャンスです。詳しい全出しの判断、出し方については、現時点で有力な記事はほとんどないので、身近なプレイヤーに聞いてみてください。

 

とはいえ、全出し後の戦術を知らないと全出しはしづらい、全出しをしないと全出し後の戦術は覚えられないというのが悩ましいところです。この記事を読んだ上で全出しを始めてみる、という順番でも問題ないように書けていると思います。もし実戦での全出しが怖ければ、既に述べた練習方法から試してみてください。

 

全出しの覚悟を決めようとしている初級者の方は、最初にKKKQとKKJQ、ラリー、紹介した程度の4枚出しを身につけることを目指してください。それだけでも十分活用の機会は回ってきます。4枚出しは難しければ4枚4桁と4枚7桁から、あるいは練習なら素数表を見ながらでも構いません。

 

対人戦で一度でも基本の流れが決まれば、より深い内容にも挑戦したくなってくると思います。そうしたら、ラリー切りの内容を参考に、相手ならどう妨害するか、自分はどうやって妨害を対策するかを考えるようにしてみましょう。ラリー切りができるようになると同時に、自分の組み切りも通しやすくなると思います。

 

また、KKQTから始め、記事で出てきた程度の他のオバケを覚えてみるのも良いでしょう。ある程度組み切りに慣れていれば、どのオバケにも「これでなければ勝てない」という活躍の機会がきっと出てきます。4枚出しの素数についても同様です。全部は途方もないですが、イメージとしては合計300個程度で上級者に手が届きます。

 

オバケをさらに得意戦術として伸ばしていきたい中級者の方は、オバケの前の素数出しを1回にする、オーソ風を練習してみましょう。これには中級者なら覚え始めているであろう、5~9枚出しの知識が活きてきます。また、以下の記事を参考にカウンティングも意識するようにしましょう。ラリーを切られなくなることで上級者相手の勝率が上がります。

 

オバケ界で新たな発見をしたい上級者、オバケマニアの方は、冒頭で紹介した「要約版・オバケ攻略」の特殊型で紹介した概念や、新たな戦術を独自に研究してみてください。個人的には、使用頻度こそ低いものの、切り札とならないオバケにもスポットライトが当たる、ロマンあふれる戦術が、まだまだ出てくるのではないかと期待しています。

 

おわりに

オバケを用いた戦い方の詳しい解説としては、今までにない記事が書けたと思います。初級者向けにできる限り内容をかみ砕いて説明したつもりですが、そもそも初級者向けの攻略記事というのが少ないこともあり、あれもこれも説明した上で、まだまだ足りない部分がありそうです。

 

今後は書き切れなかった話を新しく記事にしたり、この記事を参考にしたプレイヤーからのフィードバックを受けてより読みやすくしていきたいと考えています。それだけ将来的に必要とされる内容だと思うので、ぜひお気軽にコメントをください。最後までお読みいただきありがとうございました!

競技素数大富豪の中級者になるには

こんにちは、さしみです。競技素数大富豪は本来、運と実力のバランスの取れたゲームです。しかし、その前提となるレベルに到達するためには必要な知識が多く、大会参加者が増えない原因ともなっています。そこで、今回は、競技素数大富豪の「中級者」になる方法に焦点を当て、ゲームの面白さに触れる人を増やすことを目的とした解説をします。

 

記事の内容

最初に私の考えるプレイヤーのレベルの分類を示します。その後、中級者になるために必要な素数と、求められる立ち回りについて詳しく解説します。最後に練習法にも触れます。全体像を広く知ってもらうことを優先し、詳細は紹介する記事や今後のトッププレイヤーによる解説に任せます。

 

1 概要

1.1 レベルの定義

ここでは、各レベルを以下のように定義します。

初心者:初手(配られた11枚の手札)を素数に分けられないことが多い

初級者:初手を、強さを無視すれば組み切ることができる。全出しを試みることがあるが、全出し後に対応した素数出しはできない

中級者:初手を、強さを考慮して組み切ることができる。自分から全出しを選択できる。全出し後に組み切る方法を一つ以上持っている

上級者:初手、全出し後の手札の両方で、強く戦える全ての枚数に気付き、比較できる。最も適切な枚数を選択して組み切り、および全出しの判断ができる

1.2 中級者とは

ここではある程度バランスの取れた実力を想定します。先に述べた通り、中級者は初手、全出し後ともに、強い手札の一部を活かすことができます。上級者に近づくにつれて、その割合は増えていきます。知識の量は、一般的には300~500個程度の素数を使いこなせることに相当するでしょう。

1.3 なぜ中級者なのか

中級者は、強い手札の一部を組み切れることで、上級者相手にも勝率を確保できます。また、組み切れない手札でも強いことを認識できるため、負けた経験から効率良く学べます。総じて、より強くなるための道筋を立てやすくするために、新規の競技素数大富豪プレイヤーにはまず中級者になることを目標としていただきたいです。

 

2 中級者になるための知識

2.1 概要

中級者になるために必要な素数のカテゴリを示します。KKJのようなごく基本的な切り札を除けば、上がりや初手の組み切りに使うための基本的な素数が最も重要です。初手では二刀流と絵札攻勢や枚数攻勢が続きます。全出し後ではまた切り札が必要ですが、それに加えてここでは最初に身につける戦術としてオバケを推奨します。

2.2 基礎

あらゆる戦術は手札を減らし、残った数枚の札で上がるために存在します。そのため、4枚以下の組み合わせの多くで素数を作れることは勝利に直結します。また、3,4枚出しは二刀流でも必要になります。絵札は切り札に使うため、特に数札のみの素数、その中でも札の被りがないものは優先度が高くなります。

3枚3桁の例外の方を覚える - green+の無人島

4枚4桁の覚え方~ハム肉を添えて~ - green+の無人島

2.3 二刀流

二刀流は相手のカマトトに対応してKJQJ→443と443KJQJなどと撃ち分ける戦術です。簡単な手順で相手の実力に関係なく勝てる上に、KJQJやKTQJの上の3桁を覚えれば良いのでコスパが良いです。3枚では多少覚えづらいですがKQKとKJJの両方の上につく数を覚えるのがおすすめです。

【素数大富豪】先手必勝!4枚二刀流戦法! - [素数大富豪]3のブログ

2.4 初手戦術

ここでは、大きくて返されにくい素数を出し、残りで上がる戦術(砲撃とも)を指します。知識が役立つ感覚を得やすく、また安定した勝率を確保できるのがメリットです。絵札5枚以上または全体で9枚以上を目安にすると返されにくいですが、絵札4枚でも有効です。特にKTQJ+数札4,5枚は絵札の分解も考慮すると揃いやすさの点でコスパがとても良いです。

絵札5枚の初期手札を活かそう!8枚13桁素数の紹介 - [素数大富豪]3のブログ

2.5 オバケ

全出し後KとX4枚など強い手札を得た場合の勝ち方は様々です。例えば6枚出しラリーを覚えることにしても良いのですが、ここでは扱いやすいオバケをおすすめします。中級者になるにはまずはKKKQとKKJQで十分です。相手の実力に関係なく組み切れる場合もありますし、4枚出しを繰り返せばよいので泥仕合にも強いです。

overKJQJ(通称オバケ)特集~ - [素数大富豪]3のブログ

2.6 全出し後切り札

お互いが全出しをした状況では、必ず返されない切り札の価値が高くなります。手番を取って立て直したり、HNPを前提に組んだりするために、そのような素数をいくつかは覚えておくと便利です。具体的には6枚出しではKKKQQJとKKKTTJというように、9枚出しまで2,3個ずつ覚えておくだけで役立ちます。

n枚2n桁素数枚数別tier表 - mickey’s blog

 

3 中級者の立ち回り

3.1 初手

初手では安易に全出しせず、組み切る方法がないか時間を使って考えましょう。主には先に挙げた二刀流と砲撃になると思いますが、他にもX2枚時の1枚出しやKKなど簡単な組み切りは存在します。また、相手によっては必ずしもカマトトをしてこないので、二刀流でない3,4枚の組み切りも選択肢に入ります。特にKKJはカマトトにも比較的強いです。

3.2 HNP狙い

初手で強い動きができないと判断した場合は全出ししましょう。基本的には1枚ドローした12枚を出すのが最も強いです。ただし、全ての札の枚数を3で割った余りを取りながら足したとき、3の倍数になっているとどう並び替えても全体も3の倍数になります。そのようなときは2や5を1枚残してHNPを狙うのも手です。大まかに言って1割当たります。

意外と当たる「全出し」の確率 - green+の無人島

3.3 全出し後

全出しに失敗した場合は手札が24枚になります。手札が強いときはオバケを使って組み切るか、6枚出し以上でHNPを絡めて切り札を役立てましょう。KとXを無闇に消費しなければ何度か勝つチャンスは得られます。逆に、手札が弱いときは決まった動きはしづらいです。自分なりに工夫を凝らしてみましょう。

 

4 勉強法・練習法

4.1 素数の覚え方

覚えたい素数を紙でもスマホでもメモ帳に書き出し、気が向いたときに眺めるようにしましょう。実戦形式で覚えるのも定着しやすく、特に4枚出し以下はCPU戦でひたすら初手を素数に分けて出していくと短時間で経験が積めます。また、似た並びでまとまりを作り、一度に覚えるまとまりは多くても10個程度にするのがコツです。

素数大富豪ver4

4.2 立ち回りの鍛え方

組み切りの練習自体はCPU戦でもできますが、やはり対人戦の経験がさまざまな状況に対応するためには必須です。少し格上のプレイヤーがいると目標にしやすいですが、オンラインには上級者の方が多いかもしれません。もしアドバイスを受けても、知識が足りず実行できそうにないものはその時が来るまで忘れてしまいましょう。

 

まとめ

中級者というレベルを定義し、そこに到達する方法を簡潔に示しました。一定の知識と立ち回りを習得することで、容赦のない競技素数大富豪の世界でも、楽しみながら独力で上達できるようになります。この記事が学習や教育に役立てられ、大会で活躍できる人が増えることを願っています。最後までお読みいただきありがとうございました。