素数大富豪で算数パズル考えてみた

こんにちは、さしみです。先日、このような問題を出しました。「相手の1729で革命状態になった直後に出すことができるなら無条件で返されないように出すことができる最大の数は?」

 

この答えはとても意外なものとなります。そこで、解説とともに、面白さを素数大富豪をしたことがない人にも伝わるような紹介をしようと思い、この記事を書きました。ぜひ考えてみて、解答の面白さを感じていただければと思います。

 

 

素数大富豪のルール

素数大富豪経験者の方は、この節は飛ばして「パズルの条件」から読んでください。

 

素数大富豪というトランプゲームが存在します。4枚ずつある1~13までの札について、それぞれの表す数を単純に繋げることで数を作ることができます。例えば、1と7を並べると17、12と13を並べると1213を作ることができます。ただし、2枚あるジョーカーは、1~13までの任意の数、または0の代わりとして用いることができます。

 

例題1:トランプのカード3枚を使って素数大富豪のルールで作ることができる、最大の数と最小の数はそれぞれ何でしょう? ここでは素数かどうかは問いません。

 

解答1:最大は131313、最小は100です。後者はジョーカーを2枚使うことで作れます。

 

このようにして様々な数を作ることができます。そして、作った数を「出す」という表現をするのですが、素数大富豪のゲームで実際に出すことができる数には制約があります。もし、出したい数が素数である場合にはそのまま出すことができます。

 

例題2:トランプのカード3枚を使って素数大富豪のルールで作ることができる、最大の素数と最小の素数はそれぞれ何でしょう? 素数判定ツールを使ってもかまいません。

 

解答2:最大は131311、最小は101です。

 

しかし、出したい数が合成数である、つまり素数でない場合は、出したい数と一緒にその全ての素因数を、素因数分解が成立するように作り、捨て札にする必要があります。

 

ただし、同じ素因数が複数含まれる場合、累乗についての特殊なルールがあります。pを素数とすると、p,qを作った上でp^qとすると宣言すると、pをq個分として扱うことができます。この組はある素因数の種類について、いくつでも作ることができ、例えば3^5であれば3^3×3^2としても、3^4×3としてもかまいません。ただし、qを1や0にすることはできません。

 

例題3:1024を出すために、数と素因数の両方を合わせて消費できる最小のカードの枚数と、最大のカードの枚数はそれぞれ何枚でしょう? 素因数分解ツールを使ってもかまいません。

 

解答3:最小は10,2,4,2,10の5枚で、1024=2^10とすることができます。最大はなんと1,X(ジョーカー),2,4,2,3,2,3,2,3,Xの11枚で、2枚のXを前から0,2として、1024=2^3*2^3*2^3*2のような出し方ができます。

 

最後に、他のプレイヤーとのゲームでは、大富豪と同じような強さに関する制限があります。まず、出す数を作るカードの枚数は通常「n枚出し」と表現しますが、その枚数は現在場に出ている数があれば、それと同じでなければなりません。また、より強い数である必要があります。

 

通常は、より大きい数がそのままより強い数になります。ただし、4枚で作られる1729が出された場合「ラマヌジャン革命」が起こり、より小さい数が強くなります。1729は合成数ですが、素因数を捨てることなく革命を起こすことができ、素因数を捨てて出した場合は革命が起こりません。

 

例題4:場に出したとき、次にラマヌジャン革命を起こされない最小の素数は、4枚出し、3枚出しのそれぞれで何でしょう? 素数判定ツールを使ってもかまいません。

 

解答4:4枚出しでは1733、3枚出しでは101です。3枚出しが出ているときに4枚出しをすることはできません。

 

以上で問題を考えるために必要な素数大富豪の知識は全てになります。もし面白そうだと思ったら、素数大富豪にも挑戦してみてください。

 

パズルの条件

今回紹介する問題の条件に移ります。まず、素数大富豪をあなたと相手の2人で遊んでいて、54枚のトランプの中から両方のプレイヤーの手札が構成されています。本当は人数に関しては何人でも良いのですが、最も厳しい条件では自動的に2人になります。どちらのプレイヤーも、手札にあるカードのみを使って、出す数や必要ならその素因数を作る必要があります。一度出したり捨て札にしたりしたカードは使えません。

 

今、相手のプレイヤーが1729を出した直後で、この瞬間ラマヌジャン革命が起こり、より小さい数が強くなりました。ここで、あなたが続けてある数を出せる場合、その数を出すと相手が続けて別の数を出すことができないということがあり得ます。

 

例えば、X(ジョーカー)を0として1021を出した場合、1729と1021に1が3枚とXが1枚含まれているため、相手の手札に残っているのは最強の条件でも1とXが1枚ずつとなり、1020以下の数は素因数のことを考えるまでもなく作れないことが分かります。

 

ここで問題です。上のように、1729に続けて出したとき、相手がさらに続けて数を出すことが不可能であることが確定する数のうち、最も大きいものは何でしょう?

 

ただし、主に合成数には複数の出し方が存在します。例えば、1331=11^3は、1331=11×11^2として出すこともでき、素因数の11は11のカード1枚、1のカード2枚のどちらでも作ることができます。問題の「確定する」とは、ある数のどのような出し方が手元にあったとしても、出すことで相手がより強い数を出せなくなることを指します。

 

また、ジョーカーに関しても同様です。結局、全ての札が最も自分に都合の悪い使われ方をするとして考えると分かりやすいです。上の例で言えば、1のカードをあえて11に11に使って減らす、というような発想はこの問題を解くことに貢献しません。

 

余談ですが、素数大富豪本来のルールには山札という概念があります。そこでは、合成数出しで使った札は山札に戻り、相手がそれを手札に加えられる可能性があります。ただし、この問題では無視しても本質を損なわないため、条件に入れていません。

 

ヒント

解答をすぐに見えなくするためのスペースも兼ねて、正答より小さいものの絶妙な条件の満たし方をしていて面白い数を紹介します。

 

1292について考えてみましょう。この数は素因数分解が2^2×17×19であるため、1729と合わせると1が4枚、2が5枚必要になります。すると、Xが2のどれかの代わりに使われていなければならないため、相手の手元には多くてもXが1枚しか残りません。他は全て3以上のカードです。よって、相手は、素因数を無視してもXを1として1300以上の数しか作ることができず、1292には絶対に勝てません。

 

ちなみに、1292は素数大富豪オンラインの山札ありのルールでは返されないように出すことができない場合があります(それに記事公開直前になって気付いたため、本題の方では山札を無視すると明記しました)。同様の筋では1220はこの問題を回避でき、こちらも面白いです。

 

解答

それでは解答に入りましょう。正解は1510です。素因数分解をすると2×5×151となり、合わせると必ず1を4枚とXを1枚消費します。最後のXは1729の1に使われていなければならないので、1510が出された時点で相手は1000台の数を出すことができなくなっているわけです。

 

では、これ以上の答えがないことをどうやって確かめれば良いでしょうか? まず、ヒントの方で説明したような2を消費する方法は、これほど大きい数については通用しません。相手に1が1枚でも残れば、1489のような素数を簡単に出すことができるのです。そのため、数と素因数をフル活用して1とXを消費する必要があります。

 

数の方で1とXを2枚消費することを考えます。すると、素因数の側で3枚の消費が必要になります。できるだけ1を多く含む、小さい素因数を探すことになりますが、ここで13までの数は1枚のカードで表せるというルールが効いてきます。1を1枚含む最小の素数が17まで大きくなるわけですね。次は19、31と続くため、それらをかけると10013まで大きくなり、とても問題の状況では出せないのです。

 

では、一つの素因数でより多くのカードを消費させるのはどうでしょうか。1を2枚含む最小の素数は、なんと先程も出てきた151です(Xを消費させるなら401)。上の素数2つをかけるよりも小さく済み、かなりこのルールで強い素因数であることが分かると思います。しかし、それでも17×151は2567で、革命の直後には出せません。

 

以上から、素因数で1とXを3枚消費させる戦略自体に無理があったという結論に至ります。では、素因数では2枚として、数の方で1とXを3枚使うのはどうでしょうか。この場合、数の形に大きく制限がかかります。少なくとも1292よりは大きくないと意味がありませんから、百の位は3~7のどれかになります。すると、4枚出しの残りの3枚は全て1または0でなければいけません!

 

そのような数は非常に限られ、実際1711、1710、と上から順番に探すだけで10番目に適したものが見つかります。もちろん1510ですね。これで答えまでの道筋も同時に示すことができました。

 

おまけ

同じ設定で、もう一つ面白い答えになる問題を思いついたので、こちらに載せておきます。答えは見つかればそれ以上ないと分かるはずなので省略します。

 

もし全体で7が1枚少なかったら、どうなるでしょう? つまり、同様に1729に続けて出したとき、相手がさらに続けて数を出すことが不可能であることが確定する数のうち、最も大きいものは何になるでしょう? 素数大富豪経験者の方は、57のグロタンカットから革命を起こした場面を想像してください。

 

おわりに

 

今回はできる限り未経験者にも楽しめるように、素数大富豪に関するパズルを解説してみました。このような理論上出せる、出せないの議論は戦術を研究する上でも重要になってきます。そのようなところから素数大富豪に参入する人が出てきても面白いですね。

 

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!